第二十一部 第十章
『四季……あんた。そこまでするか? 』
子供の陸が呻いた。
『いや、ここまでは予想通りだろ? 』
四季がまたしても笑う。
『違う。女神エルティーナの話じゃない。別で人族と獣魔族をこちらに全員で攻めるように動かしているな? そこまでする意味があるのか? 』
『意味はあるよ。私の邪魔な……もっとも邪魔なものが消える。二つもね……いや、分離しているから三つか……これで全ては私のものだ』
そう四季が歌うように答えた。
「な! 正気か? 四季さん! 」
「なんで、そんなに歪んでしまったの? 」
四季と面識のある大悟と天音が叫んだ。
『歪んでいると言えば神代自体が歪んでいるんだ。そうだろ? 暁さん……こちらの世界に来たな? 弥生は良いおとりになったようだ』
『四季、止めるんだ。やり過ぎだ』
暁がそう四季をテレパシーで止めた。
『いやいや、貴方は優秀だけど、遠慮しがちなのがいけない。まあ、神人で終わって宗主候補にはなれなかったしね。優しいから茂さんも連れてこなかった。弥生はその為のおとりなのが本当だ。彼女の取り調べと内部の混乱で宗主代行も動けない。流石に、全部の神代と分家の神人とキメラを敵に回すのは私でも厳しいからね。どうせ、責任追及とかで、宗主代行の命令権はさらに削がれるはずだ。その間にこちらを全部支配すれば私の勝ちだ』
四季が勝ち誇ったように話を続けた。
『子供の陸君が禍津族の神を連れてくるのは想定済みさ。そして、君をこちらの世界で解呪に必死にさせるのも計画のうちだった。君が必死にやってたのは、私の陸に対する洗脳の解呪だろ? この緊急時にそちらに集中してもらうために、わざと最後の秘策のように思わせるようにやっていたんだよ』
「洗脳って? 」
「え? 」
『最後に陸が自殺するように洗脳を仕込んでたんだ……』
子供の陸が呻くように答えた。
『待った! それは駄目だわ! それは禁じ手だ! そうだろ四季さん! 戦いじゃないじゃないか! 』
そう月兎が激怒した。
「ルール違反ですよ」
岩魚も冷ややかに呟く。
『ははははは、神人なんてね。神になりそこなった出来損ないなんだよ。そんな考えだから、駄目なんだ。戦いとはあらゆることをする事だ。ルールなんて無いんだよ』
『……騙したんだね……』
その時、凄まじい力を含んだような思考が空間を切り裂いた。
『陸……』
子供の陸が呻いた。
そこにライオンの姿をさらに激変させつつある陸がいた。




