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第二十部 第九章

「もう、俺は助かりそうにない。後を頼む」


 身体が植物に変わりながら、晋が叫んだ。


 学と淳が即座にそれで動く。


 左右に分かれて弥生と禍津族の老人をけん制した。


 もう弥生を捕らえる気はなかった。


 暗殺者の動きである。


「どうしょうもない時は任せると宗主代行に言われている」


「禍津族が出て来たなら仕方あるまい。もはや、貴方は神代の敵だ」


「ぬかせ」


 弥生がギラついた目で笑った。


 鈴虫と蟋蟀が学と敦にそれぞれの目を二人に向けた。


 キメラの目が異様な赤い色を放ちつつある。


「ちっ、幻覚攻撃か? 」 


「もう、しょうがないな」


 そう学が手榴弾を取り出して投げつける。


 普通の手榴弾でなくて目を眩ませるような閃光と耳をつんざく爆発によって数秒のあいだ人間の全感覚を麻痺させ、テロリストや誘拐犯の動きを封じるスタン・グレネードだ。


「そんなものも想定して訓練をつんでおるわ」


「分家は古臭い手を使うの」


 鈴虫と蟋蟀があざ笑うと、閃光をものともせず、学と淳に幻覚をかけ始めた。


 虫が身体を這いまわり、自らを食われまくる最悪の幻覚だ。


 これで混乱した相手は虫を取り除こうと暴れて身体を掻きむしり、道路を飛び出て車に惹かれて死んだり、高層ビルから暴れて落ちて死んだりする。


 勿論、しばらく受け続けることで精神を壊してしまうこともある。


 廃人になるのだ。


 だが、最後に投げてきたスタングレネードが本物の手榴弾だった。


 少しでも強い幻覚を与えるために、鈴虫と蟋蟀が前に出たのが裏目に出た。


 手榴弾をくらって跳ね飛ばされる。


 鈴虫も蟋蟀も想定してない爆発で呻く。


「貴様っ! ここは神代の神域であり、聖地であるぞ! 」


「だから手榴弾を使わないと思ったでしょ。そういう思い込みは利用しないと」


 学が笑う。


「何がおかしい。貴様らただで済むと思うなよ」


「そりゃ、貴方でしょ。聖地に怨敵の禍津族を入れただけで、十分処刑の要素はそろってる」


「そもそも、怨敵が聖地に現れたら、もう使えないんだから破壊して破棄してもおかしくないし」


 そういいながら、拳銃で禍津族の老人を撃ち続けた。


 だが、老人は手を指し伸ばして、重力を操るように学と淳を抑え込んできた。


 それで拳銃で攻撃できないようにさせようとしているようだ。


「何の武器か知ってるのか? 」


「向こうの世界には拳銃とか無いはずなんだがな」


 学と淳が呻く。


『悪意だ。害意を感じた』


 そう頭に学達に鳴り響いた。


「心が読めるって話だったな」


 そう学が舌打ちした。




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