第二十部 第四章
凜は延々と走っていた。
神の洗脳範囲から魔獣が無くなったせいで、キングオーガは姿を消した。
『気を付けろ。コントロールが離れたせいで、キングオーガがこちらを敵と認識しつつある』
そう、凜に神が告げた。
凜がお付きの山女を見た。
山女が凜と距離を開けて並んで走る。
キングオーガの攻撃を一気に受けないためである。
キングオーガはブチ切れていた。
オーガを一番虐殺していた人間の女を迎えに行って、何かわけのわからないものに渡したのだ。
しかも、どう見ても跪いてである。
八大魔獣の一体だけあって、共有の洗脳が溶けた時に深く共有していただけに記憶を取り戻してしまった。
本能による反射的なものを利用したものでなかったのが裏目に出た。
そして、魔獣が四季からいろいろな知識を与えられているのも裏目に出た。
キングオーガは中央の石を包むための幅広い部分と、その両端の振り回して速い回転速度を得るための細長いひも状の部分からなる投石機を持っていた。
それを四季が持ち込んだ鉄球で武装していた。
投石機はその簡単な形状の割に実は攻撃力が強く、鉄玉とかを使用した場合、人間が使用すると小口径の拳銃の銃弾と同じレベルの威力を持つ。
未だに世界選手権みたいなのをしている島もあり、そこの優勝選手などは50メートル離れた小さな的を外さない。
今回はオーガの中のキングオーガが使用しているのだ。
実にライフル弾に匹敵する威力がある。
それが遠距離で凜たちを襲った。
武田家には投石部隊が専門であったし、あの宮本武蔵の侍大将の夢を砕いたのも投石であった。
それの遥かに威力があるものが凜たちを遠距離で狙ってくる。
目の前の大木がくらって倒れる。
凜が舌打ちをした。
想像以上に正確であったからだ。
キングオーガは激怒しつつも冷静だった。
一番厄介なパータンである。
凜は仕方なく居場所がばれる危険を顧みず、自分の後方にいるキングオーガを追えなくするために、爆炎魔法を使用した。
それはあらたなる神代の神の加護で異常な威力になっていた。
森が一気に爆裂して炎上する。
ナパーム弾を何発も叩き込まれたように森がも燃える。
それを何度も凜が繰り返す。
森の生木が燃えることで出る煙で後を追えなくするためもあった。
当てるよりも攪乱目的であった。
それで逃げれるとは凜も思っていなかった。
戦いの前段階であると理解していた。




