第十九部 第三章
四季が縁側を離れていくのを暁が手を振って見送った。
こうやって、いろいろと陰ながらのフォローを入れたりするのが暁と言う男の性格だった。
そして、暁がもう少し、四季と話していたら流れは変わったかもしれない。
四季は会ってしまった。
御門凜の母の御門弥生に。
大きな大きな屋敷なので、どこまでもどこまで廊下が続いて部屋があった。
四季がその奥へと向かう途中でふすまが開いた。
そこには御門弥生がいた。
「四季? 少し話があるのですけど」
「弥生叔母さん。来てたんですか? 」
「ええ、分家だと来たらまずいのかしら? 」
弥生が冷たく話す。
「いや、別に貴方の御実家ですし……」
「大事な話なんだけど」
「いえ、私も用がありますので……」
四季がそういなした。
弥生は分家に行ってから天真爛漫な性格が無くなったというのは皆が言っていた。
どうやら、祖母が宗主で母が宗主候補で自分もその流れになると思っていたようだ。
だが、神代家の一族の関係で分家に嫁に行かされた。
御門家は神代の分家の御三家の一つなので、別にその当主の嫁ならと言う事だったが、それが本人のプライドを酷く傷つけたらしい。
それで娘の凜を頑張って宗主にしようと必死なんだそうな。
そう言う意味で、陸に嫌な感情を抱いているという事では、陸を少し嫉妬している俺と同様かもと四季が思った。
「神はすでに覚醒に入られています」
そう耳打ちするように弥生が呟いた。
それは、暁のように達観しているものでなければ、神代の家では電源が走ったように感じる話であった。
「それは? まさか……」
だが、材料が少ない。
しかも、宗主になれなくて、心を少し病んでいるという噂も弥生にはあった。
それで、四季もまだ警戒していた。
2000年も封印されていた神があっさりここにきて覚醒するとかもいささか信じがたかった。
「陸が一度覚醒しました。それで、神が統合しようと動いたら、陸が拒否しました」
「え? 」
四季が驚いた。
それは自分の認識にもあった話だ。
陸が覚醒しているのではと……。
そして、陸が拒否?
それが四季に嫉妬を湧きあがらせた。
自分は選ばれもしなかったのに。
その心の動きを見たのか弥生がにっと笑った。
「神が凜とお前の力がいるそうだ。その話をしたい」
そう弥生が宣言した。
四季は静かに弥生がいる部屋に入ると襖を締めた。




