第十八部 第五章
「身体は壊れていない! 傷ついてなどいない! 」
陸が叫びだす。
だが、身体は変わらない。
「身体は傷ついていない! 治れっ! 」
陸がそう叫び続けた。
それは手を組んで願いのように祈って行っていた。
陸は必死だった。
早く四季おじさんを取り戻さないと。
敵地にいるのだ。
魔獣の中で一番強い獣魔神ライがそばにいる。
神代の神の復活でどう動くかわからない。
しかも、それが神代の神に洗脳されていると知れば彼らは容赦しないだろう。
俺が魔獣と人のあいの子の姿になったから魔獣とは繋がりが出来たに過ぎない。
だから、神は何も出来ない。
奴は四季おじさんを使い捨てにしたのだ。
「許せないっ! 」
歯ぎしりをしながら憎悪の言葉を叫ぶ。
だが、何も起きない。
「あのさ。魔獣と繋がりを切ったら駄目だよ? 繋がりが無くなったら彼らは僕らが操れなくなるんだから」
横から子供の陸が突っ込んだ。
「いやいや、集中させろよ」
「とにかく、身体を治さないといけないんですから」
月兎と茜が子供の陸に突っ込む。
「だって、治すって意識が強くて、元に戻るって選択肢が出ちゃってんだもの。それは困る。相手に対する非常に大きな有利な部分なのに……」
「まあ、元に戻すと考えれば、身体も戻るか。確かに、それは言えている」
「確かにね。イメージするのは無事でこちらの猫の魔獣に転移される前の身体のイメージをしやすいしね」
大悟と慎也が頷いた。
「では、どうでしょう。陸殿はこの際短期的に相手と戦わなくてはなりません。ですから強くなろうと思っていただければ……。つまり、戦うために身体を改変するのです。それならば身体の悪い部分は治るでしょうし、怒りは人間の一番強い感情でもありますし」
「良い事言うな眼鏡」
「健です」
月兎の言葉にきりりと眼鏡をついて直してキラリと健が輝かせる。
「強くなる……強くなる……奴を倒す! 奴をぶち殺す! 」
陸が小声から絶叫を始める。
「奴を倒すっ! 」
陸が叫ぶ。
それによって、猫の魔獣の中にいる陸はそれを改変し始めた。
猫科でさらに強いものをイメージしたのだ。
より強くなるために……。
「四季おじさんを取り戻す! 」
それはそれは強い感情だった。
陸の身体は次々と盛り上がって、巨大な猫科の魔獣に変わっていく。
布は破れて傷は塞がっていた。
親分達が悲鳴を上げるくらいの魔獣に……。
「こ、これは……」
大悟がその姿に絶句した。
「怪傑ライオ〇丸……」
健がそう呟いた途端、知っている人が爆笑した。
「いや、お前言うなよっ! 」
「あんな古い作品を良く知ってたな」
「ムーと格闘技オタクが近い様に特撮オタクとは近いのですよ」
健が鏡の中の宗主代行の突っ込みを受けて答えた。
英明が困惑して、月兎を見たら爆笑してのたうち回っていた。




