第十八部 第四章
「宗主! 暁がこちらから医療器具とか持ってそちらに向かってくれる事になった! 医者の手配も暁がしてある! 」
宗主代行が鏡の向こうで叫んだ。
「流石、暁さんだな」
英明が感心した。
「いや、……良い。間に合わない……」
そう陸が苦しい息の中で呟いた。
「いや、良いって……重症だよ? 」
茜が心配そうに呟く。
「治す……」
そう陸は言うと身体を起こした。
「いや、治すって……」
「子供の俺は力を貸してくれ。共有の力……洗脳の力を最大限に使う……」
「ええええええ、面白い事考えるなぁ。やるじゃん」
そう子供の僕がわくわくした顔をした。
先に、共有で陸がしようとした事が大悟に伝わったようだ。
「どういう事です? 」
「催眠でコントロールすると単なる鉛筆を焼け火箸だと思い込ませて持たせると本当にやけどをする事例を知っているだろ? 」
「ああ、なるほど! 身体を騙して怪我がないことにするんですね」
健が陸の説明で感心する。
「おおおおお、ムーだ。素晴らしい」
慎也も興奮を隠せない。
「そんな馬鹿な事が出来るのか? 」
月兎が英明や宗主代行が顔を見合わせる。
「……口伝だがな……本当に口伝でさらに古代の話で……岩魚とかのキメラをそうやって強い強い願いで神代の神の地位にあるものが作ったという話はあるにはあるんだが……」
「……それだと不可能とかほぼ無くなるのでは……」
大悟だけが冷静に突っ込んだ。
だが、月兎は目をキラキラさせていた。
「まぁた。戦いに使えるとかしょうもない事考えてるでしょ」
「いや、戦う事こそ、平和への道なんだぞ? 」
「まるで第二次世界大戦でアメリカと講和するために真珠湾を攻撃したようなもんじゃないですか」
「あれも真理だぞ。中継点を完全に叩けば当時は太平洋を渡って戦力を日本まで回すのは難しかったんだから」
「んなもん、無茶苦茶ですがな」
月兎と英明が言い合う。
「奴を倒す! 横から勝手にチョッカイを出してきて、俺だけじゃなく四季おじさんまで手を出してるとは! 絶対に許さん! 」
陸が今までに見せたことが無い様な顔をした。
すっかりおとなしくなっていた陸にしたら信じられない位戦闘的な顔だった。
「……凜のことは怒ってくれないのだな」
「いや、そりゃそうでしょ。襲撃されまくってんのに」
宗主代行が聞こえない程度で呟いたのだが、英明が聞いていたらしくて、返事をしたので宗主代行が恥ずかしそうに顔を伏せた。




