第十八部 第三章
「良かった」
そう子供の陸がほっとしたように微笑んだ。
「お前、何かやってた? 」
大悟がそれを見て怪しんで聞いた。
「何で? 」
「子供の時にお前がほっとした顔で微笑むときって絶対に良くない場合が多い。特に、今回はそれを感じる」
「いやいや、そうやって勝手に僕を悪者呼ばわりするのは大悟の悪い癖だよ? 」
「いや、お前も神ほどではないけど、碌なもんでもないからな! ガキの時に神代はこんなもんだからって責められるといつも反論してたろ! 」
大悟が叫ぶ。
それで、鏡の中の宗主代行と月兎と英明が顔を見合わせた。
「まあ、タチの悪いのは神代家の特徴ですし」
岩魚がフォローにならないフォローをした。
「いやいや、それは厳しい一言だな……」
宗主代行がそう苦笑いした。
岩魚が恐縮するが笑った。
「まあ、岩魚は私が若い時の付き人だったものな」
そう昔を懐かしそうに呟いた。
岩魚は宗主代行が宗主になる前に、護衛としてついていたのだ。
岩魚が頭を下げた。
「まるで完全に人間ですね」
「凄いテクノロジーだ」
健と慎也がそれを見て感動した。
『では互いに組むという事で宜しいな。古の神代の末裔よ』
禍津族の神人がそう聞いた。
「うむ。そうとってもらって構わない。我らの一族の者を取り返さねばならないからな」
神代家は皆、顔を見合わせたが、神代代行がそう認めた。
その瞬間、凄まじい気配が周りから起きた。
ものすごい数である。
すでに、大陸ドラゴンは分からない程度に狭い範囲での旋回を続けており、その周りから一斉に気配が拡がる。
「禍津族の戦士か? 」
「取り込まれていたのか」
そう英明と月兎が驚いた。
「お前、やっぱり企んでたじゃないか」
「しょうがないよ。敵に回るんだったら、まずは神代の数を減らしていかないといけないし」
大悟が子供の陸に突っ込んだ。
だが子供の陸は全く悪びれないで笑った。
「いや、減らすって殺す気だったの? 」
「いや、捕まえて、とりあえず監禁するだけだよ」
天音の突っ込みに事も無げに子供の陸が答えた。
『まあ、責めないでやってくれ。禍津大神は絶対に捕まえた神代家には手を出さないとおっしゃっている。だが、お前たちが神と呼ぶ奴が神代家をコントロールできる以上、そうしないと被害が大きくなるのだ』
そう禍津族の神人は説明するが、大悟達は聞いてはいなかった。
「そう言う所が駄目なんだよ! タチが悪すぎだろ! 本当に……」
「いや、こんなの普通でしょ」
大悟と子供の陸の言い合いはしばらく続いた。




