第十八部 第ニ章
「四季おじさんの所に行く」
陸が再度念を押すように呟いた。
さらしを巻いて、ヒーリングをかけたものの、激痛は残っているようだし、血はまだ厚く巻いたさらしに滲んでいた。
「行ってどうする? 」
大悟が聞いた。
「今なら、四季おじさん……の洗脳はとけるはず」
「僕と君の力ならね。まあ、本来の四季おじさん自身の力があるわけだし。なんだかんだ言っても封印をされている時にちょこちょこ自称神がやってただけだから、洗脳を解くのはやりやすいとは思うけど」
「……それと、魔獣を洗脳してコントロールする。もう、奴は洗脳を使えないんだろ? ならばそれはこちらにとって有利だ」
陸が余程思い詰めているのか一気に言い放った。
「でも、傷は? 」
『大きい部分の出血は止めたが、まだ小さい部分まで止め切ってないぞ』
「いや、でも、ここが勝負どころだ! ここで引くわけにはいかない! 」
陸が断言した。
「良かった。やはり僕だね。そういう所はちゃんと残ってたんだ。本当に良かった。今僕が君の中に戻ると僕の仕掛けたものが駄目になるから、戻れないけど。君に力を貸すよ」
そう子供の陸は嬉しそうに話す。
「何か仕掛けてんのか? 」
「やっぱり仕掛けてるんだ。あんまり変わんないよね。神と」
「いやだって、神代家だもの」
大悟と天音の突っ込みを子供の陸が何をいまさらって感じで答えた。
それで鏡の中の宗主代行と英明が苦笑した。
「よし! 気に入った! 手を貸すぞ! やっぱり、神代家は勝利の為への不屈の精神でなくてはな! 」
月兎がそう叫んだ。
戦闘狂なだけに嬉しそうだ。
「月兎……。相手は宗主なんだが……」
宗主代行が呆れ切った顔で呟いた。
「いや、神を倒すんだ。それの手伝いをさせてもらうって意味ですよ。今までずっと神は神はって崇拝してきたけど、今回の経緯を見たらがっかりした。私は神代家だけど神と神の対決に加勢させてもらいます」
「うーーん」
月兎の言葉に宗主代行が悩む。
「宜しいんじゃないですかね。正直、同じ神代家だし、神と言えども話し合いをしても良かったのに、全く信用されて無いし、本当に道具としか思ってないように見える。別に神代家の宗主はその一族全体の事を考えて動くべきだ。神と言えど本来はそれがすべき事でしょ。一族の神なのだから。それがこうも自分の事だけ考えて、動いているようでは話にならない」
そう英明が断言した。
「ううむ。確かにな……」
宗主代行も同意した。
「では、陸を助けて、四季と凜を取り戻すという事で! 」
そう月兎が大声で決意のように叫んだ。
宗主は少し困惑した顔で苦笑した。




