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第十七部 第三章

「これからどうするんだ? 」


 大悟がため息の後に子供の陸に聞いた。


「多分、魔獣で無い凜の方に神が移ったから、今後は魔獣はコントロールできないでしょ。やはり精神体として憑いてる奴の血筋の集合無意識はコントロールできるけど、凜は人間だし。後は本来の血筋として禍津族の方もコントロール出来るけど、それを昔にあっさりと阻止してしまった父親が生きてるので、動揺して引いたんだ。時間がたって父親以外が神の位置にあるなら私が勝つと言う、神だと自称する割には意外としょぼい事してるのが、あの自称神だからな」


「ええええ? そんな馬鹿な理由が? 」


「いやいや、武術やってたら、そんなものだろう」


 ちょっとショックを受ける英明に対して、月兎(ルナ)が断言した。


「そんなものなんですか? 」


「そんなもんだ。柳生は幕府に召し抱えられた事を盾にして、幕府が許さないと他流試合を基本的には厳禁だとして、強い奴と戦わないで済む防衛線を張った。そして、武蔵ですら少し後の時代の武芸者に非難されているが、当時最強と言われていた柳生とは屋敷の近くを通ったのに戦わなかった。せいぜい有名なのは吉岡家との戦いで、あれも実は相打ちだったとか吉岡に負けたまで資料によったらある。殆ど吉川先生が書いた武蔵の小説でいろんな事があったように書かれているけど、実際は殆どまともな資料は無く、五輪の書とかの自分の書いた書物だけだしな」


「あれ? 佐々木小次郎は? 」


「彼は正式に年齢を辿ると老人ですよ」


 目をキラリとさせて健が突っ込む。


「らしいな。そもそも小倉藩内の史料だと、藩内のトラブルに巻き込まれたらしくて、やらざるを得なかった上に勝ったとはいえ息をしてる佐々木小次郎を、約束では連れてきてはいけない武蔵の弟子たちが先に島に来て隠れていて、負けて息を吹き返した小次郎を滅多打ちにして殺したとかあるからな」


「そもそも、あれですよ。実際は武蔵が29歳で小次郎は78歳ですからね。勝てるわけがない。大山倍達もぶっちゃけた話で、年食ったら若いのに勝てないと。だから、武芸者は歳を食うと戦った相手の弟子や若い武芸者と戦わないように報復を恐れて山に引きこもるのだと話してますし」


「いやいや、塩田剛三がいるだろ? 」


「あれは特別でしょ。だって、昔、総合格闘技の草創期にあちこちの試合に参加してた選手が、やらなくてもいいのに中国武術とかの達人とかに次々と試合を申し込んで、それらをボコボコにして回ってたんだけど、それで塩田剛三も嘘だろうとやってみたら、あっさり骨を折られて負けたと。しかも、その総合格闘技ばりに合理的な塩田の動きから実は手加減されていて、その気になればその選手の脊椎だろうがあっさり折れる状況だったと理解してびびったと。人体の構造を理解しつくしていて、どうすれば折れるとか熟知していると。んで、あの人だけは本物って断言して、言わんでもいいのに、合気道が強いんじゃなくてあの人自身が強いだけとまで言っちゃった」


「身も蓋も無い話だよな。喧嘩でもナチュラルに格闘技やってる奴より強い奴は意外といるからな」


「まあ、特に武蔵に関しては、実際に家系図(正しいかは不明)見ると、一杯同年代に武蔵(六三四の表記がいくつかある)がいて、しかも、柔術系の人や芸術系の人もいたみたいだから、結構、伝説はまじぇまじぇされてるかもしれませんね」


「……健君。格闘技オタクでもあったんだ」


「いやいや、ムーを読むものはかなりの可能性で格闘技オタクですよ」


「えええ? 初めて聞いたけど……」


 健の言葉に慎也が異論を唱えた。


「話が脱線しすぎなのでは? 」


 たまりかねて大悟が突っ込んだ。 




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