第十六部 第十一章
「ぐはっ! 」
陸が背中を小刀で突き刺された。
それは神代家の神人が持つ守刀。
一瞬に変な感覚を覚えて陸が身を捻じったお陰で、小刀は心臓には貫通しなかったが。
全員がその姿を見て驚く。
「え? 封印から出てくる気配が無かったのに……」
大悟も驚いていた。
そこに山女がいた。
凜の付き人として来ていたキメラである。
そして、不如帰が凜を足を鳥の足爪のようにして凜を掴んで、手を羽根にして飛びながら運んで来ていた。
『お前の経験不足だ。ガキの方なら違ったかもしれんが、共有とはいえキメラを監視から外しているとはな』
そう陸の背後からまたしても扉が出てくる。
そこにいる神が陸に告げた。
「出てきた。神が……」
そう大悟が呻く。
神が封印を解いた。
陸が子供の陸と禍津大神の元へ自分を運ぼうとしたのは裏目に出た。
一気に神が動いた。
「ぐぅぅぅぅ! 」
肺を刺されて、陸が呻く。
神が封印から完全に外に出た。
それを皆が見た。
全身にまるで禍津族のような紋様の刺青。
そして、布だけを簡素に巻いた古代の仏陀のような衣服。
それは神々しさを見せていた。
その内面の禍々しさを隠しながら。
そして、その目の前に凜が跪いた。
自らの身体を献上する気だったようだ。
『出てきたな』
声が響く。
そこを見ると子供の陸がいた。
何と、あのさっき戦った禍津族の神人もいた。
『なんだ。やはり組んだのか。だが、残念ながらお前の身体は今は重体だ。基本が貴様の身体からつながっているとしたら、お前がどう騒ごうと身体を傷つけられたら本来の力を使えまい』
神が禍々しく笑った。
そう話した時点で禍津族の神人が動いた。
かって神に操られたイーグルベアに敗れた時とは違う。
動きが桁外れに早い。
ドリルのように渦を巻いた刃先の槍を神に向けて突き刺す。
それを不如帰が代わりに腹で受けて、その槍を掴んだ。
じりじりと不如帰の腹のあたりが霧散していく。
『禍津族の神槍か? まだ、生きているのか? 禍津大神は! 』
それを見て、神が呻いた。
そして、凜の中に入ってく。
『逃げるなっ! お前の親に会っていけ! 』
子供の陸が一喝した。
『ふふふ、聞いたのか……』
『お前、禍津族と神代とのハーフじゃないか! 』
そう子供の陸が叫ぶ。
それで、皆がぎょっと驚いた。
だが、それで神は笑って凜の中に溶け込んだ。
『父に伝えてくれ! 今度こそ、殺しに行くと! 』
そう凜が同じように口を動かしながら消えた。
それと同時に不如帰は霧散して消えた。
ついに神が身体を持った。
皆がその絶望感に呻く。
「いや、タスケテ……」
そして、陸は死にかけていた。




