第一部 第六章
「私、ここで寝るわ」
「いや、それはやめた方が良い。せっかくの招待だ。仲間にしてくれるための通過儀礼的な問題もある。それをやったら、もしもの時に命に関わって来るぞ」
陸が初めて天音の言葉に駄目出しをした。
「つまり、こちらが寄生魔獣の猫達の仲間に入るのは嫌だと言ってると見る可能性が高いです。止めた方が良いです」
「それは危険だと思う」
智子と健もそれに駄目だしした。
「えええ? 」
「明日以降はこちらとしても新しいシェルターを提案して、一緒に寝ないような方法を考えよう。こういう事は相当後で大きく響いてくる。仲間に入れてくれると言う儀式だと思って我慢するべきだ」
困った顔の天音に陸がさらに突っ込んだ。
「敵地だと言う考えは持った方が良いですよ」
健がそう断言した。
「女神が約束を守るかどうかは分からない。それも視野に入れた方が良い。恐らくは……恐らくだが、これほどの強大な身体で飛ぶほどの魔獣がいて人族を滅ぼすかもと言うのなら、間違いなく魔獣族側にも守護するものとして魔獣の神がいるはずだ。そちらに頼んだ方が帰れる可能性が高い」
陸が声を潜めて三人に聞こえるように話す。
「なるほど、信頼できないと見てたんですね。あの女神を」
「なんとなく、上から目線でしたしね。道具としか思ってないかもなとは思ってたんですが……」
健と智子も声を潜めた。
「そ、そう言う事なの? 」
天音が凄く驚いた顔をした。
「大体、自分達の方が正義だと決め切った話をする奴なんか信頼できないよ。両方の意見を聞いて判断しないと。何となく、人族側に何か決定的に魔獣を敵に回す何かがあったんだと思うが」
陸がそう断言した。
「でも、魔獣だし……」
「人間の視点で見るとそうなるってだけかもしれないですしね」
「向こうの世界でも、危険だから問答無用で熊を撃ち殺したりしますからね。そういう視点なのは普通にあり得ると思います」
そう言われて、天音も考え込んだ。
「まずは、こちらの世界を両面から判断した方が良い。幸い、俺達は人族だけでなく、魔族とも接する機会がある。これは大きいと思う。正直、女神側は当たり前の事だと押し切ってきたが、天音が巻き込んでおいてって怒るのは当たり前なのに、そういう所に配慮する雰囲気が無かった。あまりにもこうするのが当たり前って感じで押しつけが過ぎる」
陸がそう言ったので、天音も流石に否定できなくなって、その日は交代で皆で猫の寄生魔獣の寝床で寝る事になった。
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