第十五部 第八章
「オーガだっ! 」
「オーガが攻めてきたっ! 」
「やはりかっ! 陛下は獣魔神ライより使いが来て、休戦と交渉が決まったと言ったが! 奴らは騙したのだ! 見よ! この目の前のかぎ爪のような怪物を! 」
そう筋肉だるまのヘンリー騎士団長が叫ぶ。
だが、すでに山女と不如帰は普通の手に戻していた。
人の目を気にして、筋肉だるまのヘンリー騎士団長が騒いだ時点で、慌てて人間型に戻したのだ。
しかも、筋肉隆々とはいえ、山女と不如帰は女性の姿である。
その女性に騎士団長である筋肉だるまのヘンリー騎士団長が抑え込まれているのだ。
その時にタイミング悪く、騎士達が一部集まってきた。
「女性? 」
「ええええ? 」
異国の白い服を着た二人の女性に抑え込まれているヘンリー騎士団長を見て騎士達もドン引きである。
白い着物は戦うものが選ぶような服ではないし。
「こ、これは違うっ! 」
筋肉だるまのヘンリー騎士団長が焦る。
「あああ、煩い」
力を使って光の盾で凜を必死におさえこんでいる英明が呻く。
英明もどんどん火付け強盗みたいに話を大きくしていく筋肉だるまのヘンリー騎士団長が実は嫌いだった。
ここで、山女と不如帰と筋肉だるまのヘンリー騎士団長のもめ事に介入したいところだったが、凜が暴走をやめていなかった。
「神の為の神代であって、陸の為の神代では無いっ! あのような男は殺さねばっ! 」
凜がそう暴れ続けていた。
その間にも凄まじい怒声と剣戟の音と悲鳴が城中から起こっていた。
どうやら、集まっていたオーガが一斉に攻めてきていた。
「魔法使い殿! オーガがオーガの軍勢がっ! 」
そう伝令の騎士が慌てて、凜に伝えに来て、その惨状を見て絶句した。
「くっ! 貴様らっ! 」
筋肉だるまのヘンリー騎士団長を山女と不如帰が抑えていた手を離した。
緊急事態だと思ったのだ。
英明が舌打ちした。
早く凜を抑え込んで、英明も城の防御に回らないとと思ったのだ。
その瞬間、壁が破壊されて、英明が跳ね飛ばされて壁に叩きつけられた。
その壁を破壊してきたのはキングオーガであった。
「くっ! 魔獣めがぁぁ! 」
筋肉だるまのヘンリー騎士団長はとっさに剣を抜いて一撃を浴びせようとして、抜く前にキングオーガの一撃で跳ね飛ばされて気絶した。
全く役に立たないのが筋肉だるまのいつもの事であった。
そして、英明が叩きつけられて気絶したせいで凜を取り囲む光の盾が消えた。
「リンハオマエカ? 」
キングオーガはそう凜を見て跪いた。
凜が暴走をやめる。
何故か敵の棟梁が自分に跪いたのだ。
「コウジロノカミガオヨビダ。リンノタスケガイル」
そうキングオーガは恭しく凜に跪いたまま話す。
凜が何故かにっと笑った。




