第十五部 第七章
「いやいや、お前らが来るのは早いっ! 」
「止めれないでしょう! あなた一人ではっ! 」
「神人の力が暴走している! 」
山女と不如帰がそう英明に叫ぶ。
山女と不如帰は一気に身体の筋肉を倍加させて、凜にタックルした。
だが、それを一瞬の瞬発で凜が跳ね飛ばした。
「邪魔をするな! 奴を殺すっ! 」
そう凜が叫ぶ。
「そうだそうだ! 邪魔はするなっ! 」
横でいらない男の筋肉だるまのヘンリー騎士団長が煽る。
「しょうがない」
英明がそう身構えて手を拍手した。
そして、異様な異言を口から紡ぎだす。
祝い言葉である。
いくつもの光の盾が凜を取り囲むように出来る。
英明も神人であるが、それは戦闘タイプと言うよりも護衛に特化したタイプであった。
そして、女神エルティーナの加護を受けて、凜と同じように強化されていた。
幾重もの光の盾で凜を包み込み、戦えないように動けないようにしていた。
「糞っ! 英明! 離せ! 離せ! 」
凜が絶叫した。
「駄目だ! 宗主代行の神代ユウ様の命令だ! いや、それよりも暁様との姪の凜を守ってくれって約束だ! 俺は君を守らないといけない! 暁様には大恩がある! 」
英明もはっきりと断固とした表情で叫ぶ。
「ふざけんな! ふさげんな! お前も私を邪魔するのかっ! 」
「その通りだ! 」
凄まじい力の迸りが英明から発せられる。
ヘンリー騎士団長がそれを見てたじろいだ。
だが、流石の筋肉だるまである。
彼にとって一番大切なのは魔獣を倒す事。
八大魔獣の駆逐なのだ。
すでに、それどころの問題で無くなっているのに、一人だけ認識が遅れていた。
ずれているのだ。
そして、その近くに置いてある貴重な身長位ある壺を持ち上げた。
英明に叩きつけるつもりだ。
それを見た山女と不如帰が動く。
肉体を変化させて巨大な恐竜の様なかぎ爪の腕に変形して壺を破壊して、それで筋肉だるまを抑え込んだ。
「これ以上、話をややこしくするな」
「お前は正気か? 」
山女と不如帰が忌々し気に呟く。
陰から監視してたものからしたら、この筋肉だるまは本当に困った存在であった。
全ての話を大きくしていくのだ。
そして、それはここで発揮された。
「き、貴様らっ! その腕は魔獣だなっ! 者ども! 魔獣だ! 魔獣が城にいるぞっ! 」
そう筋肉だるまが叫んだ。
と同時に城が大騒ぎになる。
その時に外から緊急用のラッパが吹かれる。
襲撃の合図だ。
そう、交渉で休戦のはずのオーガ達がこの時に攻め込んできたのだ。




