第十五部 第六章
「ふざけるなっ! 」
そう凜が激しく壁を叩いた。
それとともに、城の壁に凄まじい強大なひびが入っていく。
女神エルティーナの力で魔法使いにもなったとはいえ、本来は神代の神人である。
それが女神エルティーナの加護を得たおかけで、信じられないことに彼女の神代の力も掘り起こされていた。
それによって、城の壁が長い範囲で崩れ落ちた。
「ちょ! ちょっとぉぉぉ! 今、目立ったら帰れないじゃないっ! 」
英明が想定外の出来事に唖然とした。
だが、凜は暴れまくった。
壁をさらに破壊する。
信じられない力だ。
実は凜は神代家でベスト3に入る強者の戦闘型の神人であった。
意味もなく、祖母と母のコネだけで、こちらの世界に派遣が選ばれたわけではないのだ。
「ふざけるなっ! ふざけるなっ! ふざけるなっ! 神代は神代でも宗主の本流ではない神代のあいつが神だと? そんな馬鹿な話は認められない! 断じて認められない! 」
凜から巨大な揺らめきが上がる。
凄まじいオーラだ。
「神人の覚醒? 違うな……いやいや、おかしい? どういう事だ? 神への覚醒とは違うはずだが……なぜ? 何だ、この力の奔流は? 何かコントロールされている? 」
それを見て英明が動揺していた。
神代の力は洗脳ではなく、正確に言うと共有である。
そして、神人クラスになるとある程度相手の能力とかに関しての共有で把握は出来る。
そして、英明が電気にしびれたように震えた。
操られている?
この憎悪は本来のものではない!
宗主になりたい一心の夢と、分家に行ったコンプレックスから、それをコントロールされている?
誰かが憎悪を吹き込んだ?
しかも、共有の力で……。
「待て! 待て! 落ち着けっ! 凜っ! まずいだろう! 」
いちいち関係ないのに破壊音がしたので、あの筋肉だるまヘンリー騎士団長がスキップしてやってきた。
「良いですぞ! その怒りっ! 我も魔獣と交渉などと訳の分からぬことを言う、あの男に怒りを感じております! それでこそ、凜殿だ! 」
などとさらにヘンリー騎士団長が凜を煽った。
「殺す! 奴らを殺すぅぅぅ! 」
凜が絶叫した。
それは威圧の様な凄まじい波動で広がった。
「もう、仕方ありません」
「止めなくては」
さっと壁の破壊された穴から白い着物を着た二人が飛び込んできた。
それはもしもの時に影から凜を見守っていたキメラの山女と不如帰であった。




