第十五部 第二章
「正直、それは受け入れられないと思いますよ。はっきり言うと私ですら陸が宗主になるのは反対です。候補者落ちで馬鹿にされまくってた部分もあるし、それを今更、神にだと……」
日葵が動揺したまま発言した。
「これは決まりなのだ」
宗主代行の神代ユウが断言した。
「男の候補者落ちと言うのはそもそも一族の間で馬鹿にされやすいのです。それ以上にその後も高校こそ名門校に行ったものの、その後は番外組落ちで、神代家の本家から分家の下の分家に養子縁組の話すら出ていました。そんなものがトップになるだけで、そんな馬鹿なって思うものもいるし、それが神になるのですか? 」
日葵は引かなかった。
「これが一族の考えだよ。宗主代行。だから言ったじゃん。陸を候補から外して、下に落とすのは反対だって。特に候補者候補から神人になったものは格落ちだけど、そんなに馬鹿にされないけど。一般の一族のものに落とすのはまずい。神を宿るシャーマンとして宗主としてちやほやされた過去があるんだ。そんなのが候補から降りて神人にもなれずだと一族の間では馬鹿にされまくる。今までちやほやした連中が手のひらを反すんだ。真面目な話、陸が一族に報復したらどうするんだ? 」
「え? 」
暁が宗主代行の神代ユウに強い調子で抗議したので、日葵が驚く。
「そんな気配があるのか? 」
「子供の陸にはない。だけど、あちらの陸は分からない。そういう陰の考えってのは心の奥底で静かに溜まってることもある。そうなった時に、あの能力だ。どうなるかわからんぞ」
「それならば神の味方をして陸を……」
暁の突っ込みで宗主代行の神代ユウが暗い顔になる。
「いやいや、なんでそうなるの? 」
「そういう考えが陸を腐らせてたかもしれないって事なのに」
日葵の言葉に茂と宗明が突っ込んだ。
「あの子供の陸が禍々しいって言ってるんだから、ひょっとしてもっとやばいのではって気はしてるんだけど……」
暁の言葉に皆が絶句した。
日葵ですら、段々と現実が見えて来て、ちょっとそれに同意するような雰囲気になっていた。
意外と柔軟で、戦争の史学などを学んできた日葵は歴史が好きで、昔の価値観と今の価値観の差も何となくわかる。
人や魔獣がいて、それらが互いに食い合っていたような弱肉強食の中では現在の考え方と違う可能性は十二分にあるという事だ。
今の時代で言うと、神を崇めるだけの世界とはまた違うのだ。




