第十四部 第七章
禍津族の本拠にテレポートを繰り返して、さっきの禍津族の神人が向かう。
巨大な巨大な大木の前の広大な広場にやっとの事でたどり着いた。
そこに六本の腕を持つ他の禍津族の神人と四本の腕を持つ普通の禍津族のものが集まってきた。
感覚で共有できるらしくて、何が起きたのかは皆知っていた。
皆が労わる様な仕草で、さっきの禍津族の神人の無事を喜んでいた。
そして、その巨大な天空にすら拡がる高さが十kmを超える巨大な大木の根元に向かう。
その大木の根元で腕が千手観音のように42本ある禍津大神が木と同化していた。
上半身だけが大木から浮き上がり、そこだけが禍津大神の身体のように見える。
全身の螺旋のような模様は大木にもあり、どうやら禍津大神の身体から伸びて大木の全体に拡がっているようだ。
その前にさっきの禍津族の神人が跪いた。
『『よくやった。お前の役目は果たされた。……そして、ようこそ来られた。異界の神代の神よ』』
禍津大神の言葉が辺りに響いて、さっきの禍津族の神人だけでなく、全ての禍津族のものも動揺して辺りを見回した。
『なんだ。わかってたのか』
そう苦笑して、さっきの禍津族の神人の背後から子供の陸が現れる。
『『さきほど戦った時に、心に繋がりを持ったのは分かっていましたし、あなたがそうやって会いに来るのを予見で見て知っていましたから』』
『なんだ。最初から僕と話をする為に呼んだんだ』
『『ええ。貴方はどうやら穏健だ』』
『うん? あの神を食べたら駄目なの? 』
子供の陸が少し驚いたように聞いた。
禍津大神とも心を共有して、その心を読んだらしい。
『『ええ、あれは長い長い年月に魂を食べ続けたものが持つ、しこりの様なものが溜まっています。食べた場合、貴方にもあの残忍さ獰猛さ冷血さが移ることになるでしょう』』
『それは困った。僕は僕でいなくなるのは嫌だ』
そう子供の陸が困惑したように皆の頭に響かせる。
それを見て木に張り付いて、姿こそ禍津族のようなものに見える禍津大神だが木に同化されて木の仏像のように無表情に見えた禍津大神が初めて微笑んだ。
それが今並んでいる禍津族の皆が見たことも無い様な優しい笑顔だったので、皆が驚いた。
禍津大神はずっと長い事微笑んだことすら無かったからだ。




