第十三部 第八章
「嘘だろ? 嘘だろ? 」
暁が突然、悲鳴を上げた。
「ど、どうしたぁぁ! 」
宗明が驚いて叫ぶ。
「一応、感覚を飛ばしていたんだが、あいつ……陸の奴。覚醒した部分を切り離して生きてる。もう一人陸がいるんだ。覚醒した陸が……正確には子供の陸が……」
「はああああ? 」
「そんな事ってできるのですか? 」
日葵が驚いて思わず突っ込んだ。
「わからん。だけど。二人いる。どういうことだ! しかも、子供の陸が神が目覚めた段階で攻撃した。待ってたんだ。神が閉じ込められた精神で作られた檻の中から出てくる瞬間を狙って」
「えええええええ? そんな事できるの? 」
「知らんよぉぉ! こんなの神代家の歴史にも無いし、下手したら神の口伝にも無いし」
「陸は? 現在の陸は? 」
「陸はそのままだけど。こちらも覚醒はしてる……」
「二重覚醒かよ」
「わからん? 」
「何それ……」
嫁さんに凜の事を連絡してきた茂が戻ってきて異常事態に気が付いて話に参加して唖然としている。
「まずい。いや、まずいのか? 分離したはずの覚醒体の子供の陸が単体で我が神を圧倒している……」
「なんだ、それ? 」
「いやいや、どれだけ化け物なんだ? 」
「月兎は? 」
「神の子供の陸に対する攻撃に操られて使われて、子供の陸が操っているこちらの世界の勇者に撃退された」
「え? 」
日葵が凄い顔をしている。
月兎は名前はともかく、戦闘タイプの神人としては神代家のトップ3に入る。
だからこそ、護衛役に選ばれたのだ。
それが双方の戦いに全く対処できないなど……。
日葵の想像の枠を超えていた。
まして、あの候補を外されて下っ端に降りた陸に……。
「なんだよ、その強さ……」
「予感のレベルじゃないじゃん。まして、二人もいるなんて。なんで陸が二人もいるのよ。しかも双方覚醒してるって何? 」
「しまった! 感応を飛ばしているんじゃ無かったぁぁぁ! 切ったのにぃぃぃぃ! 感応を閉じたのにぃぃぃ! 」
暁が見るからに真っ青になった。
半狂乱になっている。
『あ、やっぱり、見つけ! 暁おじさんか? お久しぶり』
突然、空間に子供の陸が現れる。
いたずらっ子っぽく、皆を虚空で座って見ていた。
「本当だ。子供の時の陸だ」
「マジかよ」
宗明と茂がそれを見て絶句した。
日葵も意味不明の異次元の感覚を感じて恐怖のあまり動けなかった。
そして、ついてきた徹底的に訓練されていた兵士達も動けなかった。




