第一部 第三章
「もう一度聞くけど、それは何? 」
天音が震えた様に陸が肉に塩のようなものを振りかけるものを見た。
「ほほう。隠し味という事ですか」
そう、健が横からじっと陸の手元を見るので、陸が塩のようなものをかけた肉を焼いて渡した。
「むぅ」
「この塩っ! 凄く上質な自然塩のような味わいですね! 独特なうまみがある! 」
健が唸ると、それを見た智子もその肉を食べて感動していた。
「美味しいの? 」
「かなりミネラルがある塩です」
天音のおどおどとした顔に健と智子は深く頷いた。
それで、あまりの問題の連続でお腹が空いていた天音もその肉をかじった。
確かに美味しい。
だが、不条理な感じがして、陸をよく見た。
陸はこちらから見えないように地面を掘っていた。
「ちょっと、見せなさいよっ! 」
天音が叫ぶと強引に陸をこちらに振り向かせた。
陸は自分の横の土を掘って五十センチくらいの穴をあけていた。
「ふふふふふ、猫さん達に聞いたのさ。当然生き物である以上、塩は必須。勿論血まみれの肉をそのまま食べれば塩分は取れるが、それで持たない時もある。必ず何らかの対策を持っていると思っていたんだよ」
そう陸が自慢げに微笑んだ。
「確かに生物にとって水と塩は必須ですものね」
そう智子と健が頷いた。
「ま、待って、土の中に何で塩が? どうして? 」
「いや、土を掘ってドラゴンの体表まで行くと、そこに塩の層があるそうな」
そうすでに地面に掘ってある穴の奥からさっき焼いた肉にかけてた白い結晶を出して見せた。
その塩は白くてサラサラしていたが、微妙に色が琥珀色に近かった。
それを嬉しそうに陸が天音と健と智子に良く見せた。
健と智子は感心したように、その塩を見ていた。
だけど、天音は震えていた。
「そ、それは……ドラゴンの体表にあったという事は……まさかドラゴンの汗とかが土の間に堆積したものでは……」
天音が顔面を蒼白にしてやっと呟いた。
「ははははは、爬虫類は汗をかかないよ」
「いや、でもあるんでしょ? 」
「何らかの体液が固まったもの。つまりドラゴンのパワーが入ったドラゴン塩という事だ」
陸がにっこりと微笑んだ。
「いや、ポジティブすぎるだろうがぁぁぁ! 」
天音が激高して叫ぶ。
「素晴らしい。ドラゴンのエキスが生きているんですね」
「なるほど、ミネラル分が凄いのも良く分かります」
だが、健も智子も感心して頷いていた。
「いや、絶対おかしいだろうがぁぁぁ! 」
天音が叫ぶと泣き出した。
「何、猫達も食べてるんだから大丈夫」
陸がさらにポジティブに答えたが天音は泣き止まなかった。




