第十二部 第四章
「だってさぁ、アメリカだってそうでしょ。一時期はイラクに攻め込んで石油産出国だからって喜んでたけど、防衛とか再建に余計な予算が大量にかかって、何時までも戦争が終わらないから、費用も被害も凄くなって結局金を使うだけで撤退したじゃん」
宗明がそう突っ込んだ。
「あれは、まあ、ブッ〇ュ.ジュニアが戦前の帝国主義で独裁国家だった日本を敗戦させて、今じゃアメリカの援助で立派な民主国家にできた。だから、イラクのような中東の国にもそれは出来るってアメリカ人らしく信じてたからもあるけどさ。馬鹿だよね。できるわけ無いし、現在の人権に配慮した支配コストを考えたらメリット無いし。日本は第二次世界大戦前で半島と大陸で十二分にそれを理解してるでしょ」
「日本って戦前から民主主義で、戦後に言われたほど発言に不自由は無かったらしいけどね。実際、『またも負けたかナントカ連隊』って普通に茶化してたらしいし。半島の開発で東北が後回しにされたので飢えたのが問題になって2.26事件になったのが現実だしな。」
茂と暁まで突っ込んだ。
ぶっちゃけ、奴隷とか植民地にでもしないとメリット無いんだが、それはそれが出来るそういう時代であればこそで、こちらの世界にそういうなのは無いので難しそうだと言うのを暁達は、この世界に食い込む段階で理解していた。
「藤原家ってうまいことやったよね。藤という形で天皇家に絡まり共に生きていくことで栄耀栄華を得た。正面切って支配して、その後の教育やら、反対派のゲリラ対策とか考えたらメリットがねえよ。日本の戦国時代だって奴隷とか人身売買ってのが普通にあって、人権とか無いから侵略とか行けたわけで、ここの世界は意外と禍津大神の思想かもしれんけど、そういう奴隷とかが無いからな」
「いやいや、敵の! 我らの仇である禍津大神を褒めるなどと! 」
日葵がブチ切れた。
暁が顔をしかめた。
やはり信仰心が篤いものには、現実的な話は通じないかとため息をついた。
「大体、この一族の大事に貴方方は何を考えておられるのかっ! 」
さらに日葵が一喝した。
「でも、陸が……って話通りになったな」
茂が突っ込んだ。
「え? 予想しておられたので? 」
日葵が驚いた。
「予想と言うか、まあいろいろあったし。予感が凄かった」
暁は神人であるからか、超常の力も使えるし、予感めいたものが非常に鋭かった。
「では、それならば良いではないですか」
日葵が微笑んだ。
日葵は神人であるが戦闘タイプに特化していた。
「良いなら良いんだけどね」
そう暁は呟いた。
彼の予感は不安に満ちていた。
神代の神は神代家から出た異端児にして麒麟児の結果であった。
暁の予感は陸の力はそれに匹敵するのではと見ていた。
つまり、両者の間で、とてつもない混乱が訪れるのではと想像していた。




