第十二部 第二章
第一軍の指揮官は神代暁だった。
年齢は40歳で宗主である神代ユウの息子である。
御門家に嫁で行った凜の母の兄にあたる。
そして、分家の御門茂と御柱宗明が補佐に回っていた。
年齢はほぼ同じである。
どれも身長百八十センチ近く、体躯は筋肉質で鍛え上げられていた。
そして、神代に連なるものの特徴である、イケメンである。
基本的に神代家とその分家はハンサムな人間が多い。
そして、それらは全て相手を魅了するためのものであった。
彼らは神人であり、特殊な能力を持つし、祝い言葉という祝詞を使い異様な力も使えるのだ。
そして、この三人は百人ほどの特殊な訓練を受けた部下を連れて来ていたが、実は困惑していた。
「……本当にやるんだ」
「マジかよ」
茂と宗明がそう暁に突っ込んだ。
「いや、本当だよな……」
そう暁も目の前の日本の山とかに似た植物を見回してため息をついて同意した。
クナハ王国を攻めるにしても、武器は材料のままでまだ作っていなかった。
だから、まずはクナハ王国の人のいない山に入り、そこで武器製造をしなければならない。
発電機も回すから、音が立つのでかなり人里から離れていた。
「いやいや、暁さん達、何を言ってんの? 」
暁の戦術を補佐している副官の御剣日葵が突っ込んだ。
神代家の分家の御剣家のもので自衛隊にいたりして特殊部隊の戦術も学んできた26歳の美人のお姉さんである。
戦うためにショートカットにしているが、表情に異様な魅力がある。
まあ、神代の一族は大体にして美男美女ではっとするような魅力がある。
洗脳と人間の人心掌握などを行ってきたから、容姿すらも利用してきた結果であるが。
さらに、日葵は暁達と同じ神人の能力も持っていた。
ちなみに神人の上を行くのが女性の宗主のなる巫女と陸のなった神子であるシャーマンである。
「いや、3000年も待ってて、もう来ないとか思ってた神の復活が俺の代であると思わないもの」
「3000年だもんな。邪馬台国の女王卑弥呼の悲願とか言われても、はあ? って普通の人は言うんじゃね? それより古いとかさ……」
「一部のご老人が騒ぐからやってたけど、今更なぁ」
茂に宗明も暁でさえも同調した。
今の日本と同じで、声の大きな連中の意見が通り、それが急進派で、それの正論と信仰を盾にした意見で神代家は動いていた。
それに対して暁達はある意味普通の考え方……穏健派であった。
もちろん、日本のコントロールは神代家の利益になるので熱心に行っていたが、まさか、今更の故地の侵攻である。
母である宗主に、「今更? 」と皆の前で呟いて、他の一族のものに示しがつかぬと言う事で、第一軍の指揮官に任命されたと言うのが実はの話であった。
宗主の息子が故地の復活への懐疑的だと言うのは組織として問題だからであった。




