第十一部 第八章
「いや、それだけ? 」
慎也がたまりかねて突っ込んだ。
「ああ、だって、同族で今は距離置いて敵対してる部分も、あるわけでしょ? こんなものだよ。しょうがないさ」
「いや……」
諦めきったような顔でいる陸を見て慎也が絶句した。
「だってさぁ。候補に選ばれたときに10歳にもなってないのに、死んでもおかしくないって言うような修練をするんだよ? 思い出したけどさ。ぶっちゃけ、シャーマンたるもの心が動じてはいけないとかさ。ちょっとシャーマンと違うよね。それに思い出さなくても、さぁ……」
「思い出さなくても? 」
茜が聞き返す。
「なんだか知らないけど、一族とか関わったもので敵対したものが変死すんだよ。なんで? ってくらい。一族のものでも、何か一族に敵対するような事をしたって噂が流れると死んだりした事もあった。病気だったり、事故だったり。どう考えても普通じゃないよね。だから、俺の家って実は犯罪組織……それもヤクザじゃなくてシンジケート系のヤバいのかと思ってたよ。記憶を消されてたし」
陸がため息ついた。
「まあ、そうだよな……」
大悟も同意した。
「やっぱり、やばいの? どうも、背後というか心の中というか、何かいるよね」
そう陸が淡々と話す。
「ああ、そちらは<神>と呼んでいるだろうが、こちらの話だと<滅び>だ」
「<滅び>? 」
「ああ」
「厨二全開だな」
陸が苦笑した。
「仕方あるまい。本当にそういうらしいから」
大悟も困ったように笑う。
「どのくらい……時間があるのかな? 」
陸が少し悲しそうな顔で呟いた。
「わからん」
大悟も首を振る。
「自殺するのは無しね」
そう天音が突っ込んだ。
陸が少しびくっとする。
「何か、何か方法は無いの? 」
茜がややパニクって叫ぶ。
「何か聞いてるんじゃないの? おじいさんから……」
何故か天音が奇妙なことを大悟に言い出した。
「え? あれ? そういえば? 」
大悟が自分の記憶に驚いた。
何故か天音が言った途端に浮かび上がるように思いだしたのだ。
「そう言えば……祖父が言っていたような……あの子は確かに怪物だ。だから、覚醒すればあれを目覚めさせるだろう。だから、お前はそれを殺さないといけないとしたが、恐らくお前には無理だろう。お前は優しい子だ。だから、無理だと思う。だから、もう一つの方法を教えよう。つまるところ、<神>と言えど実は同族なのだ。それの異端児とも言える。だからこそ、あの子も怪物だ。あの子に彼を食べさせろ。精神を全て吸収させるのだ。あの子も優しい子だ。あの子なら<神>になっても大丈夫だ」
祖父に言われたとおりに大悟が話す。
「は? 」
陸はそれを聞いて固まったままだった。




