第十一部 第七章
「なぜ? 」
真っ暗な闇の中で大悟が天音に聞いた。
「ああ、トイレに行こうと思ったから」
「いや、そうじゃなくて」
「ああ、魔獣って夜目が効くのよ。お昼と変わらない感じで見れるから」
「いや、だから……」
俺が何をしようとしていたのか、こうすると知っていたのか知りたかった大悟に対して、天音は淡々と普通の話しかしない。
「あんだけ飲んだら、そりゃトイレくらいねぇ」
そう天音が苦笑した。
「いや、俺がこうすると分かっていたんだろ? 」
「いいや? 驚いたけど、まあ殺したりとかできないよね。幼馴染だし友達だものって思ったまま言っただけ」
天音がしれっと話す。
「そ、それだけか? 」
「いや、家族とか一族の話も聞くとそういう事もあるんだろうなとは思ったけど」
「いやいや、お前、おかしいよ。マジで」
「なんで 」
「友達を殺そうとしたんだぞ? 」
「できなかったじゃん」
「まさか……お前は本当に何者なんだ! 」
大悟の声が段々と大きくなる。
さっきの<アークブレイド>のスキルを使って、すっぽ抜けたが木を次々と貫く音はした。
そのせいで皆が起きだしてきた。
酒を初めて飲んでしまったから、少しふらふらしているが……。
「あーあー、皆が起きてきちゃったよ」
そう天音が苦笑した。
陸も起きてきた。
それで大悟の顔が歪む。
だが、陸はじっと大悟を見ていた。
単に寝起きでぼーっと見てただけなんだけど、それだけで大悟はいたたまれなくなった。
強気ぶって冷静ぶっているけど、根は優しいのだ。
「すまなかった。一族のものの使命としてお前を殺そうとした。覚醒しても最初はずっと起きてるわけではない。本当に覚醒したままになるのはだいぶ先だと習ってきた。だから、その時は迷わず殺せと。そう習ってきたんだ」
自分のやったこ事の罪悪感から、陸がその場で土下座して叫ぶ。
「本当に本当にすまなかった」
大悟が涙を流して必死に頭を下げる。
最初は寝ぼけていたけど、その話を聞いて慎也も茜も健も智子も目を覚ます。
だが、陸はあまり気にしてなかった。
「いや、多分、そういう事はあると思うよ。お互い、因果な家に生まれたし、しょうがないよね」
それが陸の答えだった。
大悟も驚いたが、慎也たちはもっと驚いた。
大悟の真剣さと姿から殺そうとしたのは事実と分かる。
だが、陸は気にしていない。
どうも、表面的に取り繕っている雰囲気ではない。
何という性格……そう、慎也は思った。




