第十一部 第五章
皆が寝静まった後、焚き火の火が燻ってあたりが暗くなる。
人間である大悟達には暗い闇が広がっていた。
それで大悟達も寝てしまったし、それを見て陸達も寝た。
いろんな事があって疲れ切っていた。
疲れているときは寝るに限る。
特に心が疲れているときは余計に。
寝たって何も解決しないが、それでも心が落ち着く。
そして、どれだけ時間が経ったろうか、静かに、本当に静かに大悟が立ち上がった。
目に迷いが見られた。
さっきまで皆で本当に昔のわだかまりを捨てて話していたのだ。
だから、その姿をもし見る者がいれば異様だと思うだろう。
「……今はあれは寝ているようだな」
そう鋭い殺気を陸に当てながら、反応がないのを見て呟いた。
他の皆は途中から、魔獣に飲ます酒をしれっと果物で割って飲んだので、皆は酔っぱらいきっていた。
それは大悟がそれとなく行ったのだ。
皆を酒で眠らせたのだ。
剣を抜いて陸の前に大悟が立つ。
「すまん……。お前を殺さないといけない」
そう大悟は呟いた。
性格は合わなくて、はっきり言うと嫌いな方だったが、それでも偽りとは言え長い事幼馴染だった相手だ。
喧嘩別れをしていても、幼馴染で長い事付き合っていると、家族のような錯覚すら生まれることがある。
大悟にとっては大きな大きな友人なのだ。
だから、性格が合わなくて嫌いなこともあって距離を置いたが、それは言い訳だ。
祖父と一族のものから固く言われている話が本当だった。
常にそれで言われていた言葉がある。
もし、彼が覚醒したら……躊躇なく殺せと。
事故に見せて殺せ、バレない場所なら工作はいらない躊躇するなと。
大悟がじっといびきをかいている猫の寄生魔獣に転移している陸の顔を見た。
久しぶりの会話で何度も陸は大悟に謝っていた。
自分の性格の悪さを自覚していて、すまなかったと何度も謝っていた。
「……本当に謝るのは俺の方なのにな……」
きっかけはあの子供の時の会話でいらっとしたのもあるが、本当の話は疲れたのだ。
祖父とか一族のものの口伝を信じるものからの圧力に。
「……こいつも好きでこんな家に生まれたわけではないのに……」
大悟の目が潤む。
そして、袖でそれを拭った。
神代家に精神コントロールと記憶操作があるように、それとはレベルが段違いだがある程度の精神コントロールは那智家にもあるのだ。
それからの『もしもの時は陸を殺せ』という轍が嫌で大悟は陸から離れたのだった。
そして、それは今も大悟を縛っていた。
まるで扉の陸の中の何かを閉じ込めている鎖のように。
陸を苦しませないように、大悟は静かに上段で剣を構えた。
一撃で苦しまないように首を跳ねるのだ。
それは勇者のスキルを持つ、今の大悟には簡単なはずだった。




