第十一部 第三章
あれから、何が起こったのか思い出せないが、蛇の形の刃の槍が見つかり、禍津族のものを魔獣族の誰かが殺したことは間違いなく、獣魔神ライが真っ青になりながら大騒ぎになっていた。
欲情してサカっていたチョロ熊さんの娘や寄生魔獣の雌達も今は普通に戻った。
智子も元に戻ったが、自覚が残っているらしくて、なんでこんな事にと騒いでいた。
「やはり人族は違うな、我ら魔獣は発情期があるゆえ、こんなものだと思うだけだ」
智子の混乱して真っ赤になったりして取り乱すのを見て、チョロ熊さんは苦笑していた。
獣魔神ライはそんな平常運転のチョロ熊さんを叱ると今後の相談の為に帰っていった。
陸達が関係しているのはわかったが、その影響が読めないので、獣魔神ライの指示で今回はイーグルベアは全部撤退することになった。
まあ、あのクラスの魔獣達が狂暴化しても、こちらはどうにもできないし、それは良い。
もともとは大陸ドラゴンの背中は誰も襲ってこないから、猫型の寄生魔獣が住み着いた安全な場所だし。
大悟も仲間で話し合いたいとの希望を言ったので、そのまま残れるようになった。
辺りは酷い焼け跡になっていて、そんな中で半分くらい残った大陸ドラゴンの背中の森の近くで焚火をした。
流石に腹が減ったので、魔獣達に今夜食べさせる予定だった肉を串焼きにして、迷い人が持ってきた向こうの焼き肉のタレをかけて食べる。
スープもちょうど<空飛ぶドラゴン亭>オープン前だったので出来立てがあったので、皆で飲んだ。
本来のスープは強壮の為にドラゴン塩も隠し味で使うのだが、そんなの飲んだら大悟たちが下痢になるので、スープは迷い人が持ってきた調味料だけで作った。
「どうかと思ったが、うまいな」
「これ、下痢しないよね」
「大丈夫だと思うよ。だって、魔獣の肉でなくて、そちらでも人族が食べている動物の肉だから」
魔獣と動物とどう違うのかと言いたいところだが、魔獣と動物は話せるだけでなく、魔素とかいうものが体内に流れているとかで、それが全面的に違うのだとチョロ熊さんに教えられていた。
まれに魔素が強い個体だと魔法が使えるとかいろいろ教えてくれたが、別に学問があるわけではないので、あくまでチョロ熊さんの見識だけである。
「果物もおいしいね」
茜が残りの森の半分からとってきたフルーツを食べる。
「ドラゴン塩って、ここの大陸ドラゴンの背中の地下にあるんだよね。多少は木が吸収して実にたまってないのかな? 」
「恩知らずにも攻めてきて、ここで暮らしてたおっさん達は食ってたけど」
「ああ、ヘンリー騎士団長でしょ。不死で有名だし」
「あの人、馬鹿だからそういうの効かないよ」
「いや、下痢してたけど」
「意地汚いくらい食べたんじゃないの」
天音の突っ込みに茜が答えると、誰もが反論できなかった。




