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第十部 第十一章

「獣魔神ライ殿、これはどういうことだ? 我らは場合によっては、この事を禍津大神にお伝えせねばならんがっ! 」


 蛇のようになった刃の槍で必死にイーグルベアの攻撃を受け続けながら、禍津族の一人が絶叫した。


「待ってくれっ! 長い盟約もあり、禍津大神殿はいわば神々のリーダーではないか! 我らは何も知らんのだ! あれはオーガキングと戦争になって困っている女神エルティーナが呼び寄せし者だ! 何故、こんなことになっているのか我にもわからぬのだ! 」


「中にいるぞ! 」


 血まみれでへたばって、息も絶え絶えの禍津族の一人が陸を睨む。


「そやつを渡せ。まだ封印は生きて……い……」


 立って蛇のような刃の槍を向けていた禍津族のもう一人が絶句する。


 大悟は陸の背後に見える扉の隙間が少し空くのを見た。


 凄まじい力の封印でそれが大悟には鎖のように見えたが、ガチガチに扉を巻いて開かないようにしているはずだった。


 その隙間から瞑った目が見える。


 そして、その目が薄っすらと開いた。


 何という恐怖。


 何という力の持ち主。


 まるでエジプトの魔除けになってるかのようなホルスの目のようなものが開いて、にやりと笑った。


 陸は恐ろしいことに憑かれているせいか、それに気が付いていなかった。


 それは陸に寄生しているのではないかと思われた。


 寄生しているものは宿主に気がつかれないように相手を蝕んでいく。


 それはそのようなものに大悟に見えた。


「どういう事なのだ! 」


 獣魔神ライがそう陸に怒鳴ると同時だった。


『殺せ』


 その目がそう言った。


 その瞬間に全てのものの攻撃の意志が禍津族に向かう。


 そして、その禍津族の二人を一瞬でミンチのようにしたのは、あろうことか獣魔神ライであった。

 

 神ですら操ってしまうのだ。


 あの怪物は。


 人や魔獣だけではないのだ。


 あまりの事に大悟は動けなかった。


 陸も目の前に起きたことに、呆然としていた。


 そうして、一瞬、にやりと笑うとその陸の背中の鎖で閉じられたはずの扉から覗く目は閉じた。


 そして扉も元に戻った。


 まるで何もなかったかのようだ。


 だが、間違いなく禍津族はバラバラどころかミンチのようにされた残骸は残っていた。


 そして、恐るべきことに、それを魔獣達も獣魔神ライも何も起きなかったかのように、あたりを何があったのかという感じで見まわしていた。


 してしまったことの記憶が無いように見えた。


 大悟が呆然とした。


 そして、それを映像で見ていた迷い人が陸に向かって跪く。


 それは陸の中の誰かに対してした事だ。


「……我らの聖戦の始まりですな。第一軍を呼びましょうぞ……」


 小さな小さな声で囁くように迷い人はつぶやいた。

 

 

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