第十部 第六章
じゅるりと言う感じでイーグルベアさんの雌達が陸に近寄ってくる。
流石、獣魔神ライの近衛のイーグルベアさんだけあって積極的すぎる。
「え? どう言う事? 何で? 」
陸の動揺が物凄い。
「いやいや、無茶じゃない? 」
茜がそう突っ込んだ。
「いや、でも、そういう感じじゃない? 」
「こういう場合って、最近の漫画とかだと魔獣が擬人化するんですけどね。相手のイーグルベアとかが突然に人間の女性に変わったりとか」
「でも、陸君は今は魔獣だし」
「なるほど」
慎也の言葉で健が納得する。
「いやいや、俺、そういうのは、まだ何だけど」
「大人の階段を上るんだね」
「いや、そういうのいらんわっ! 止めてくれっ! 」
「他人の恋に口出したら馬に蹴られて死ぬとか言うし」
「恋か? これ。操られているだけじゃん! あ、チョロ熊さん止めてくださいっ! 」
陸が絶叫した。
チョロ熊さんが近くに居るのを思い出したのだ。
だが、チョロ熊さんは少し困惑していた。
「パパ」
三頭のうちのイーグルベアの一頭がチョロ熊さんに声を掛けた。
「「「パパ? 」」」
「娘だ」
チョロ熊さんがそう紹介した。
「娘が居たんだ」
「いやいや、娘さんなら余計にっ! 駄目じゃないですかっ! 娘さんが他所の男にって駄目でしょっ! 」
陸がバタバタした。
「いや、それは人族の考えで。魔獣は交尾は交尾で本能のものだし」
チョロ熊さんの言葉で陸が凄い顔になった。
「いや、駄目でしょうよ! 」
「ちょこっとだけだから」
チョロ熊さんの娘がそう話す。
陸が真っ青になった。
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それを大陸ドラゴンがすれ違った山の上から見ているものがいた。
それは人間のような姿はしていたが手が仏像のように4つあった。
そして、全身にらせん状の蒔いたような刺青がある。
腰から下は獣の革で作ったズボンをはいており、上半身は裸で刺青を見せつけるようにしていた。
それらは二体いて、不思議な蛇のような槍先の槍を持っていた。
「匂いだ……匂いがする」
「あってはならぬ匂いだ。帰ってきたのか? 奴が」
彼らの恐怖に満ちた顔が凄かった。
彼らはあからさまに動揺していた。
倒せなくて封じられたまま異界に逃げて、こちらに戻って来ては、ならないものの気配がする。
その気配だけは覚えておけと彼らは子供のころから教え込まれていた。
それは長い長い年月に伝えられた忌むべき気配と匂いなのだ。
彼らにとってはそれから発されるフェロモンのような光が気配と匂いとして感じられるのだ。
彼らは大陸ドラゴンを追い始めた。
それが何なのかを確かめるために。




