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2.ハロゥキティを着用した姿を撮られたくない

 そして現在

「ハアッ、ハアッ」

「…………」

「スマホ向けんなって、うおっ!?」

 俺の隣を並走してスマホ向けてくる奴がいたので、さっきの高校生かと思い怒鳴ろうとしてよく見るとビルで別れた童部だった。

「よくその状態で走れるな!?」

 傘をさしたまま、こちらに顔とスマホを向けてシャカシャカ脚を動かし、ほとんど頭を上下動させずに走ってる。こいつ本当に妖怪なんじゃないのか?

「……小学生達と遊んで鍛えている。鬼ごっこで“北29条の女王(クイーン)”の異名をとる私には造作もない」

 なんか得意気だが、小学生にそう呼ばれて嬉しいか?

「……」

「いやだから撮るのやめろや!」

「……私に投稿動画のネタを提供してくれているのでは?」

「な訳あるか!」 

 なんでお前の動画のために俺の社会生命削らにゃならんのだ

「……では何故?」

「馬鹿な同僚に忘れ物届けなきゃなんねーんだよ!濡らすわけにも濡れるわけにもいかねーんだ!」

「……なら、このまま撮られていた方がいい」

「はあっ!?」

「……どうせもう皆に撮られまくっている。それがネットに上がるのも間違いない。だったら、ちゃんと事情を話した動画を撮影してそれをアップした方がいい」


 言われてみれば一理ある。

 なので、俺は息を切らしながら童部の質問に答える形で事情を説明した。さすがに忘れ物が取引先の社長へのお土産とは言えず、そこはぼかしたが。


 説明し終えた頃、目的地への最後の角を曲がった。あとはショッピングモール下のトンネルにあるバス乗り場まで一直線だ。

「ハアッ、ハアッ、そういうわけだ、それじゃ!」

 俺は童部に手を振りラストスパートをかけてダッシュした。


 トンネルに入ると必死で運転手と交渉していた加戸村が気付いてこっちに走ってくる。


「おおっ!間に合った!滝田、こっちだ、ブフォッ」

「誰のせいだと思ってるんだ!」

 俺の恰好を見て噴き出した加戸村の頭に拳骨をねじ込む。

「悪かったって、とにかく助かった!じゃあ行ってくる!」


 運転手さんと他の乗客の皆さんに謝りながら加戸村がバスに乗る。そのバスが出発したころ、童部が歩きながらこちらに近づいてきた。

 そして自分の傘の他にもう1本持っている傘をこちらに差し出した。


「……今そこで買ってきた。接待会場に行くのに使うといい。そのレインコートは私がビルに戻って警備員さんに預けておく」

「すまんな。後で傘代込みで何か奢るわ」

「……楽しみにしている」


 それから俺は接待の会場へと向かった。幸い風雨も少し止んできたようだ。


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