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片想いとそれぞれの愛  作者: 灯些季
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壱流


 俺は失恋をした。相手は一つ上の学年の幼馴染みだ。あいつとは幼稚園の頃から家が近くで高校生になってからも好きな奴の話しなんて聞いたことない。朝はだいたい一緒に登校しているせいか俺とあいつは付き合っているのではないかと言われたこともある。

 そううわさされると「困ったね」と穏やかに笑いながら言うからもしかしたら満更まんざらでもないのでは?なんて期待していたけど違った。

 フラれる心配はないと思っていたけどあいつからすれば弟みたいなものらしい。俺はあいつのことを姉とはおもったことないのに!

 失恋というけど告白したわけではない。あいつに彼氏が出来たと報告された。笑顔で。あまりにも嬉しそうに言うものだから「よかったな」としか言えなかった。


「なあ俺とあいつは姉弟に見えたか?俺ってあいつの弟にみえた?」

「僕からすれば幼馴染みだよ?壱流いちるが望んでいる通り彼氏に見えたかって聞かれれば微妙びみょうだけどね。」

 俺は同じクラスの読書をしているもうひとりの幼馴染みである光希みつきに聞くと何とも言えない答えがかえって来た。

 なんだよそれ?

「どういう事だよ」

 本は閉じずに淡々とした感じで答えてきた。

「言葉のままだよ。兄弟っていう距離感じゃないけど彼氏というのは違う感じだ。それを言うなら遠くも近くもない僕と同じ。つまり昔から普通に仲のいい付き合いだよ。」

「それただの幼馴染みじゃねーかっっ」

「だからそうだって言ってるでしょ」

 呆れた顔までされた。

「意識ぜんぜんされてなかったってことかよ」

「その結果が今でしょ?」

 幼馴染みは身近な異性だから意識されやすいってネットでみたことあったのは嘘か?あ、でもそれだと光希もそうだか意識されるってことに当てはまるな。それは困る。

 俺は読書を続ける薄情はくじょうな幼馴染みを見る。

 モテそうでもモテなさそうにも見えないおとなしい普通の高校生。今どき珍しいデジタルに興味がない、スマホを見るよりも読書が好きな少し古風な男子高校生だな。あれ、そういえばこいつスマホ持ってたか?あまり、というか全然持ってるとこ見たことない気がする。

「僕の方見てるけど何か用?」

「用っていうかお前スマホ持ってる?」

「は?携帯電話くらい持ってるよ。ちゃんとかばんの中にあるから」

 俺に言われて気になったのか鞄の中を探る。

「ない。どうやら忘れたみたいだな。まぁ別にいいか」

「いいのかよっ」

 現代人の必需品ひつじゅひんじゃねーか。

「朝だけど丈瑠たけるに廊下で会ってお前のスマホにLine送って返事が来ないって言ってたぞ」

「Line?確か携帯電話に入っているアプリだっけ?昨日は携帯触ってないから家に帰ったら確認するよ」

 まて、アプリかどうか聞くほどか?

「そうじゃなくてっ、いやそうだけど今日中に丈瑠に会って用事聞いとけよ」

 返事を返す幼馴染みにため息をついてしまう俺は悪くないはずだ。

 丈瑠というのは隣のクラスの友達で基本的にどんな奴とでも友達になれる性格的にも見た目的にもイケメンだが時々俺のバカ話しにも付き合うし人見知りな光希も話しが出来る貴重な人材だ。

 そしてはLineを光希のスマホに入れたのは俺だ。せっかくスマホを持っているのだから連絡とりやすい方がいいと入れさせてもらったけどこっちから連絡しない限り文字送る事もない。既読きどく表示(ひょうじ)されていてもなかなかかえって来ないから、聞いたら文字を打つのに時間が掛かったみたいだ。俺の幼馴染みはおじいちゃんだったんだろうかと思ってしまった。

 

 昼休みに丈瑠の教室に行こうとしたらしく光希が席を立った所に丈瑠が弁当を持って来た。話というのは光希と丈瑠がハマっているシリーズ物の小説が映画化するらしくそれをに行かないかという誘いだった。光希は嬉しそうに行きたいと言って明後日の土曜日の午前の回に行くことがきまった。俺ももちろん行く。小説は苦手だからそのシリーズ読んだことないけど気になる俳優が主人公だしアクション系の話しだから面白そうじゃん。

 そう言ったら光希が原作の一巻だけでもいいから読むべきだと家に帰ったら貸してもらうことになった。ていうか、丈瑠は自分から誘っておいてなんで俺に何か言いたそうな顔してるんだよっっ。睨み返したらLineで『後で話しがあるから放課後に体育館裏に来い』とメッセージを入れられた。

 えーーー俺何か悪いことした?


 放課後になると本当は部活である陸上部の部室があるグラウンドに向かいたかったがその前に体育館裏に向かう。場所が場所だけに決闘けっとうを申し込まれた気分になるのは仕方ないと思う。

 丈瑠はすでに来ていた。というかお前もうバスケ部の部室行って体操服着替えたのかよ、別にいいけどズルいと思ってしまう。

「それで何なんだよ急に呼び出して」

「あのさ昼休みに話した映画の事だけど・・・・・お前は休んでくれないか?いや休んで下さいっお願いしますっ!!」

「はあっっ?」

 いきなり土下座ってなんなんだよっっ!しかも敬語とかガチじゃねぇかっ!あれ、それってこいつ光希と2人で行きたいってことか?ん?んん?

「なあ返事する前に1つ聞いていい?丈瑠は光希のことそういう意味で好きか?」

 あっ答え聞くまでもないなっ土下座の姿勢のまま耳まで真っ赤だ。

「映画はなにがなんでも観たいってわけじゃないから土下座はやめろ。それでいつからあいつのことそう思ってるんだ?」

「いつっていうか、いつの間にかだな。同じシリーズが好きってわかって色々と少しずつだけど話すようになって光希って表情わかりづらいけど割と変わるんだよなっよく見てると意外とわかりやすいところもあるし華やかな顔立ちじゃないけど可愛くてっ」

「ストップ一度黙れ!!」

 だんだん早口になって息継いきつぎなくしゃべる友人の言葉を止める。

「はぁ〜可愛いよなぁ〜」

 恍惚こうこつとした表情で言う姿には申し訳ないけど「やべぇ大丈夫か?」と引きそうになる。俺の幼馴染みの何がコイツを変えてしまったのか。

 それにしても女子にそれなりにモテるイケメンが地面に座り込んでこの顔は客観的きゃっかんてきに見るとかなりマズいのでは。

「とりあえず立て。俺がお前をいじめているみたいだろ。」

「わかったよ、それで断るタイミングだけど当日の朝の5分前くらいに俺に連絡するという設定はどうだ?」

 え、なんでこいつキラキラした笑顔でトチ狂ったこと言ってんの?ドタキャンとかありえないだろ。じゃなくて

「どうだ、じゃねぇよっ俺あいつの隣りの家っお前に伝えるより本人に言った方が早ぇぇだろっ」

「そこは手が離せない用事の途中ということで先に行ってもらえよ。だって光希って人見知りだろ。俺は友達だけど正直すごく親しいって思えてもらってないからな。安心素材の壱流が居ないってわかったら来ないかもしれないからそれだけは避けたいんだ」

「ツッコミたい事は色々あるけど素材言うな。まぁ確かに来るか来ないか微妙だよな。」

 というか丈瑠の思っている通り来ないだろうな。俺は少し話せば大抵たいていの奴とは仲良くなれるからよくわかんねぇけど数回話した相手でも警戒けいかいするんだよなぁ。

 怖がりっていうかそういう性格だから仕方ないっちゃ仕方ないか。だけど動機がなんであれ少しでも克服できるキッカケになるならありか?

「わかった。協力してやる」

 こうして俺は恋のキューピット(?)として一芝居ひとしばいを打つこととなった。

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