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毎日三食、僕の部屋で充電する彼女  作者: 鳩芽 すい
二章「ああ、温かさを知ってしまった。」
9/10

9.縄が無い

 長い夜だった。眠れない。眼球が乾く。夢に逃げられなかった。

 シラピを夜間ずっと追い続けるために悠々と仮眠をとっていた半日前の自分を罵倒したくなる。お前が余計なことを企てたせいで、お前が余計なことを、それもちょっとわくわくして。


 いま、シラピは何をしているのだろうか。窓から外を窺う。闇に包まれたなか、青白い光が点々とぼやけていた。魂がさまよっているようだ。


 ――話は後で。


 思い出す。あの表情。シラピは僕に怒っていた。がっかりしたかもしれない。うんざりしたかもしれない。きっと失望しただろう。

 次会ったとき僕は、シラピに見捨てられるのかもしれない。


 僕はストーカーをした。シラピに執着しきっていた。

 重い、とか以前に気持ち悪いし恐怖を覚えても当然の行動だった。


「がぁぇ……」


 手がテーブルの上をたぐさっていた。ちょっと前までの発作のようなものだ。

 ロープがあって、その質量を感じて、いつでも死ねることを確かめる。

 ロープがあって、じっと質感を見つめて、死んだときを想像する。

 ロープがあって、実際に天井にくくりつけて、首をいれる。

 ちょうど今と、シラピに会う前だけに最後の目的でロープをとろうとした。


 でも、いまロープはない。シラピが外へ持って行ってしまったから。

 情けない。自分の存在を消したい。心の内で100回自分を壮絶な目に晒しても全然足りない。

 ため息をつく。こんなときでも、僕はまた逃げようとしていた。


 思えば宇宙の両端の星が突然急接近するほどの奇跡だった、あんないい子と僕が近づけるなんて。ここで途切れる、それも自分の罪で後腐れ無く嫌われて。なんともまあこれは有終の美だろうか。

 罪は潔く裁かれよう。あわよくば、機械の手に殺してもらおう。大層な死生観をお持ちなこの世界だから。


 ベッドの温もりに甘える気にはなれなかった。布団を温める熱は、自分の身体から発生する熱だから。そんなものおぞましくて触れる気になれない。


 部屋の隅で膝を抱えた。夜の空気に冷えたフローリングが、僕の熱をどこかへ持って行って薄めてくれた。


 やっぱり、自分が嫌いだ。


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