九十一話 :魔法適性
ハウエルの家を後にすると、隼人が話しかけて来た。
「なあ、カインたちちょっといいか?」
「ん? どうした隼人」
「化け物たちが使ってる技って、俺にも使えたりしないか?」
「うーん、どうだろう」
「弱い魔法を打てるか試してみますか? それで分かるかもしれません」
「名案だな、よし試しに行こう」
隼人は魔法がない世界に生まれた人間。魔法が元からある世界に生まれた俺たちは違う。実際、俺たちの世界でも魔法の適性がない人間も存在している。
適性がないとわかったものは、商人や行商になり生計を立てている。適性があったとしてもこの道を選ぶ者も少なくない。
ハウエルに魔法練習場となる場所があると教えてもらい、早速そこに向かう。
魔法練習場は、木の人形と木の的が乱雑に置かれていた。魔法がかけられているから、そっとの力では壊れないとハウエルは言っていた。訓練で使われている的にも人形にも傷はついていない。
「よし、ファイアーボールとかでやってみるか」
「ファイアーボール? どうやって打つんだ」
「私たちは、心の中でスキル発動と言ったり、口に出したり言ったりしてます。 なので、まずはカインさんの鑑定士のスキルでステータスを見てもらいましょう」
「あ、その手があったか」
カインの鑑定士スキル。何のスキルを持っているか、PM等を可視化出来るもの。初めて鑑定士が現れた時は、敵のステータスがわかると持ち上げられたものだが、信憑性が無いとされ、底辺スキルへとなってしまった。
スキル発動――鑑定士。
スキルを発動します。
近藤隼人――全てのステータスが不明です。
「ステータス不明? こんなの聞いたことが無いぞ」
「つまり俺の力は未知数ってことか?」
「そうなりますね。 それじゃ、とりあえず腕を水平に伸ばして、あの木の的を目掛けてファイアーボールと言ってみましょう」
「分かった。 ファイアーボール!」
水平に伸ばした掌から出たのは、申し訳程度の火だった。ファイアーボールというには、あまりにも小さくか弱い。
しかし、隼人には魔法適性があった。
「出た……! 出たぞー!」
「出たけど、なんで隼人に魔法適性が?」
「うーん、どうしてでしょう? 隼人さんたちはお先祖様になるので、元々眠っていた力が何かの拍子で目覚めたとかですかね?」
「その説が濃厚だな。 まあ、何はともあれ隼人これから訓練に励むぞー!」
「おぉ〜!」
◇◇◇
「動き出したか……」
ではまた。




