八十話 :おかえりなさい
閉まっていた殻は開く。心地の良い温もりと共に。
「……今日はゲームオーバーみたいだ」
「ゲームオーバー? 何言ってるんや」
「あぁ、そうか。 時間切れみたいだ、またどこかで会おう」
男は意味ありげな言葉を残すと、魂が抜け落ちたみたいにガクンと体制を崩す。地面にぶつかる手前で、倒れる体を支えたのは、精神世界へ行っていたラリンだった。
「おかえりなさい、カインさん」
「ただいま、皆」
赤かった目はいつもの目に戻り、表情には安らぎが満ちてた。
「憑き物が落ちたようだね、カイン」
「肩が軽いから、落ちた感じはするね」
「こっちは肩が重たいわ、痛いわでヤバいで」
ジンの口からは文句が飛出ているが、手はカインの肩に乗っかっていた。4人の体は、満身創痍なのはずなのに、笑い合い体を叩き合い冗談を言い合う。
「……あ、ドラゴニックさんー! 兄さんこっちですー!」
「オラクルか、ちょうど良かった回復魔法を頼む」
タイミング良く、オラクルがやってきて回復魔法をかける。
「ドラゴニック、ボロボロだな」
「ディアンガ、大変だったんだぞ。 来れない理由があったんだろ? どうしたんだ」
「魔物の大群が、突如ナロスへ向かってきていると言われてな、そっちの処理をしていた」
「……なるほど。 まあ、いいや。 ギルドに帰ろう、疲れたよ」
「帰りましょうか、カインさん」
「ほら、帰るで〜。 よちよち、赤ちゃん」
「やめてくれ、ジン。 でも、悪かった」
「謝ることはない。 ただ、これからは悩みは打ち明けること」
「分かった」
「じゃ、このことは水に流しましょか」
カインはこの3人に会えて良かった、と心の底から思う。悩みを打ち明けず、抱え込んで傷つけてしまったのに笑って許してくれる。
「……ありがとう」
2人には聞こえない声。心の中で感謝を。
ではまた。




