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七十五話 :交わる剣、違える道

 ガバスと剣を交えたのは、2年前のこと。


 小さな孤児院から町へでてきた、カインに初めて出来た友達それがガバスだった。


 右も左も分からないカインに優しく手を伸ばし、一緒に冒険者になろうと笑いかけてくれた優しい笑顔は、いつも脳裏にあった。


 剣を交え、共に力を高めあった。10回戦い5敗。カインとガバスの力は、同じだった。でも、17歳の頃2人の力の差は、そびえ立つ山のように離れていった。


 信頼していた友から告げられた、冷たく心無い言葉はカインの心を抉り風穴が空いた。ぽっかり空いた心は治ることはなく、2人の仲は悪くなっていた。


「どうした、手も出せねえか!? 惨めだなあ、弱いなあ、可哀想だ」


 止まらない猛攻をカインは真正面から、避けることもせず、ただ受ける。


 顔の骨が、肋が悲鳴をあげようとも避けようとしなかった。


「……俺たちどうしてこうなっちまったんだろうな」


「あぁ?」


 剣を笑い合い交えていたはずなのに、2人の顔には笑みはない。浮かんでいるのは、憎悪と嫉妬に満ちた薄汚いものだけ。


「昔はさ同じ道を走ってたのに、いつの間にか道は違え、剣も交えなくなってしまった」


「お前が! お前ガ! お前、お前、お前」


「どうしたんだ、ガバス!」


 目の瞳孔が開き、壊れたおもちゃのように同じ言葉を繰り返すガバス。おかしさが滲み出ていた。


「ああぁ、許さない。 許さない、許さない」


「気をしっかり持て!」


 見えない何かに呑まれそうになるガバスは、口から泡を吹き出す。ガクガクと痙攣を始め、意識の糸が途切れたのか下を向き、ピタリとも動かなくなる。


「どうしたんだ……ガバス」


「……アアァ」


「おい、どうしたんだよ。 ガバ……」


 意識を取り戻したガバスに近付くと、見えない壁に弾き返され吹き飛ばされる。少し遠くに見える、ガバスは人間の姿をした化け物へと変貌を遂げていた。


「……くっ。 なんなんだあの力は」


 3つほど家をお邪魔したが、幸い酷い怪我は負ってないようだ。けれど、殴られた場所はひしひしと痛み始めていた。


「……あ、ァァァ。 ワ、ワ、カラ、ナイ。 カ、カイン、助けて……」


 最後の力を振り絞ったガバスは、遠くに吹き飛ばされたカインを見つめ助けを求める。その声は震え、目には涙が溢れていた。


「……最初言っただろ、これは俺からお前への復讐(きゅうさい)ってよ。 だから、安心して俺に任せとけ」

ではまた。

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