六十六話 :タイムリミット10分
力が共有される時間は、たったの10分。この間に倒せなければ、負けは確定する。
にへら顔をこびりつかせて、楽しむように戦うフローラル。真剣に戦ってないのに、押されて、押されて攻撃が出来ない。
「ほら、ほら。 お腹がら空き」
「スキル発動! セイクリットウォール!」
斬りかかっても意図も簡単に弾かれて、カウンターをくらいそうになる。くらえば即死、間一髪でラリンのセイクリットウォールで、死を免れる。
「ちぇ、面倒臭いな。 でも、弱いね、剣聖の力って。 それに、力をちゃんと使いこなせてないね」
「……減らず口だな」
「減らしても、減らさなくても勝てるからね。 それより君、そのままじゃその力に支配されるよ」
「何を言っているんだ……?」
「弱い器が、自分を上回る力を収めておけるはずがないからね。 まあ、苦しくなるだろうから僕がさっさと殺してあげるよ。 まっ、君が支配されても僕には関係ないし、さっさと死んでね」
「カイン、そいつの言葉に耳を傾けるな! 時間も無い! 今は、倒すことだけを考えるんや!」
「あ、あぁ!」
力に支配される……。フローラルの言っていることは、真実なのだろうか。剣聖の力は強大で、人類に牙を向けば簡単に滅ぼすことが出来る代物だ。支配されてしまうというのは、真実味が帯びている。
考えるのは後にし、集中力をもう一度高める。
「スキル発動! セイクリットウォールを横にして、うぉら!」
「おっと、防御魔法を横にして斬撃のように飛ばしてくるとは、面白い使い方するね」
「これもあかんか! なら、これやな……」
「武器を落とすなんて、君馬鹿だね〜!」
武器を地面に落とし、精神を統一するジン。防御魔法を横にしたりと、奇想天外のアホなことをするが武器を落としたジンは、持っている時よりも強い。それを知らない、フローラルはドブを走るネズミを見るような目をする。
「はぁ!」
「こんな弓矢、当たるわけもない……って、あっち! 何この弓矢!」
「神魔法と気の応用ですよ。 難しいので、言葉には出来ませんが」
神魔法と気の応用。弓矢に気を流し込み、そこに神魔法の魔力を流し込む。魔物特攻の魔法を、人口魔物と名乗る魔教徒が、触ればダメージが微々たるものだが入るというわけになる。
「小賢しい真似ことを。 もう許さないから……さっさと殺すことにきーめた」
顔色が変わり、にへら顔には怒りが滲み、額には血管が浮き出る。体からは殺気が溢れ、気圧されそうになる。膝が地面に付こうとする。震える足を、震える心を顔に笑みを浮かべ打ち消す。
「第2ラウンドって、ことか」
残りタイムリミットは、5分。
ではまた。




