五十六話 :朽ち果てた集落
朝になって森から動物たちの鳴き声が聞こえてくる。自然の目覚ましは、寝ている俺たちの意識を覚醒させる。
目が覚めた俺たちはブローディアさんが出してくれた朝食を頂く。
「さっ、魔物の調査に行こう」
「はい、ジンさん、ブローディアさんまた後で会いましょう」
「おう、また後でな」
証拠探しに向かったジンたちと別れ、俺たちは調査へ向かう。まずは、魔物を見つけなければ何も始まらないため森へ行く。
朝日に装飾された森は葉を揺らし息をしていた。魔物の作った巣がないか地面と木々の間を、注意深く見て行く。
奥へ奥へと進んで行く。
「カインさん、あれなんですかね?」
「ん? 集落みたいだけど、こんな奥に集落なんて作るか?」
ラリンが見つけたのは明らかに人工的に作られたものだったが、そこに人が住んでいるような感じはしなかった。
「かなり朽ちてますね。 いつの時代のなんでしょうか?」
「分からないけど、かなり古い建物なのは確かだな。ギルドに報告しておこうか」
見つけた建物はずいぶんと古いもので、形がわかるように留まっているのが、奇跡といえるほどだった。形を留めているのしている建物は3つだけで、他にあったはずの家は朽ち果てていた。
連絡石でギルドに報告をした後に、少しだけ探索をする。
「何か落ちてないかなー」
何か出てこないかと土を掘っていると、カツンと石に当たったような音がする。もし昔のものだった場合それは、大変貴重な物になる。慎重にゆっくりと地面を掘り進めていく。
「あ、出てきました! これは瓶ですかね?」
「うん、瓶だけど。 この中に入ってる丸い玉はなんだ?」
瓶が出てきたが、中には光を綺麗に吸収し反射する丸い玉が入っていた。瓶を振ってみると、カランカランと麗しい音を立て転がる。
これも一緒にギルドに送っておこう。
「よし、そろそろ魔物の調査に戻ろうか。 ラリン」
ある程度探索したが見つかったのは、不思議な玉を持った瓶一つだけだった。これだけでも十分な成果なのかなあ?歴史は苦手だから分からないや。
「そうですね。 魔物の調査に戻りましょう」
ラリンは膝についた土を叩き落とす。朽ちた集落を後にし、魔物の巣探しを再開する。
「あった」
集落から少し歩いた木と木の間にぽっかりと空いた穴を見つける。これは確実に魔物の巣だ。
「ラリン離れていて」
巣に籠っている魔物を引きづり出すため、空に向かって神魔法を使い爆発音を出す。驚いた魔物たちは一斉にぞろぞろと巣から顔を覗かせてくれる。
「うん、見た事のない魔物だ! ラリン行こう!」
「はい!」
巣から出てきた魔物は、二足歩行で木で出来たプロテクターのようなもので手足を守っていた。これは叡智化した魔物だな。例によって魔法は使えない。そのため地道に魔物を1匹ずつ倒していく。
「ふぅ、倒した終わった。 鑑定、鑑定と」
忘れないうちに魔物の鑑定を済ませてしまう。
ウームヌイ
状態 怒り 興奮 原始化
また原始化と表示される。一体なんなんだろうか、この原始化とは。まあ、ギルドの報告待つか。今日はこの魔物ことを報告して帰ろう。これちゃんと調査出来てんのかな。
「ラリンそろそろ帰ろう。 かなり奥に来てしまったみたいだし、早く帰らないと日が暮れてしまう」
「そうですね。太陽も傾き始めてますから、早く帰りましょうか」
太陽が傾き始めていたため、今日の調査は切りあげることにした。
ではまた。




