五十一話 :暗闇に座り込む老人
さあ、始まりました。野宿。サーバント連合国を出発し、近くの町を探そうとなったユニゾン一行でしたが、町なんてひとつも見つかることなくただ真っ直ぐ道を歩いていたらなんと空の太陽はすっかりお休みしてしまい、焚き火の炎が俺たちの影を暗闇の野原に伸ばしている。
「暗くなっちゃいましたね」
「やっぱり歩きって遅いんだな。 考えが浅かった気がする」
「ほんまやな、この調子じゃいつ着くことになるんやろうな」
夜になり冷えきった気温は、体温を奪っていく。歯はガタガタと震え体も震える。この震えだけで、地震が起きてしまいそうだった。震源地になるのはゴメンのため、適当に落ちていた木を拾い焚き火を作る。火が出来たことによって体の震えは徐々に止まり、震源地になるのは防ぐことに成功した。
「じゃあ私は、ご飯作っちゃいますね」
ラリンがご飯を作ってる間俺たちは、いい匂いに釣られてやってくる魔物を殴って追い返していた。少し疲れた頃に、ご飯は出来上がった。
「出来ましたよ〜。 ジャガのスープです」
ジャガとは芋科の植物で、寒い地域でよく栽培されている食物だ。こんな寒い夜にはスープが体を芯から温めていく。
「うーんめー! ラリン美味しいよ!」
「うっまいの! ラリンはいいお嫁さんになるな!」
「えへへ、喜んでもらえて何よりです。 おかわり沢山あるのでいっぱい食べてくださいね」
外は寒いが仲間と笑い合い囲む、ご飯も悪くないな。
今夜の野営地を探しながら、暗闇に飲まれた野原を歩く。
「今日が最後の、野宿ですかね」
「になるやろうな。 地図を見るにしろ、多分そろそろ着くはずや。 飯も底をつきはじめたからな、明日には着かんとこの野原の養分になっちまう」
野宿を約1週間続け、シャンネルまでの距離は僅かとなっていた。
「なあ、あそこに誰ないないか?」
「か、カインさんたら、驚かそうとしてもダメですよ。 こんな真っ暗な場所に人なんているはずないじゃないですか」
「いや、でもあそこにほら」
暗闇を歩き続けていたら、少し先の地面に座り込む人影がうっすらと見えた。驚かそうとはしてないのだが、俺の横に歩いていたラリンはすっかり怯えてしまって体を震わせている。
徐々に距離が縮んでいき、人影が鮮明になっていた。
「ほら、やっぱり居た」
「……おや、若い旅人だね。 こんなところで何をしてるんだい」
「そら、こっちのセリフやで。 じいちゃんこそ何しとん? こんなところで」
地面に座り込んでいたのは、麻のローブを深く被った白髪の老人だった。体は痩せこけており、今にも倒れてしまいそうに見える。
「ほっほっほ。 それもそうじゃや。ワシはただの死にぞこないの旅人じゃよ」
「死にぞこないのって、まあ、ええわ。 ラリンご飯にしよう。 今日でここで野宿しよう。 カインもええな?」
「勿論さ」
老人が座り込むこの場所で、俺たちは野宿することに決める。老人を1人ここに放っておくことは出来ない、ということだろう。
「なんじゃ、なんじゃ。 お前さんら。 急にここを野宿場所にするなんて言い出して 」
「旅人の気まぐれですよ。 おじいちゃん。 はい、ご飯です。 一緒に食べましょ?」
「いや、一緒にご飯なんて」
「そう言いながら座るんかい!」
老人の口は断りながらも、体は正直で一緒にご飯を囲む。食料は底を尽きたが、いいだろう別に。おじいさんも、美味しいそうにスープ飲んでるし。
「そうじゃ、お前さんら。 これからどこに行く気なんじゃ?」
「シャンネルへ行こうかと」
「そうか。 あそこへ。 なら、気をつけた方がいいじゃろう。 最近あの辺の魔物が活発化しているからの、何やら奇妙な魔物までいると聞く」
「奇妙な魔物?」
「あぁ、知能無いはずの魔物が、人間を罠にはめたりするらしいんじゃよ。 おかしな話じゃよ」
「分かった、気を付けるよ」
スープを片手に老人に心配をかけまいと気を付けると言ったが、アイコンタクトを送る。人間を罠にはめる魔物。完全に完璧に叡智化した魔物のことだろう。やっとギルドに叡智化した魔物の情報を送れそうだ。
ここ最近は、ずっと叡智化した魔物には出会わなかったから、好都合だ。
俺たちは、その夜老人を寝食を共にした。
蛇足話をくっつけました。ではまた。




