四十七話 :戦闘訓練
お茶会が終わり、この国は一致団結を果たせのだろうか。いや、今はその効果は出てこないがこれから先何十年先に芽は出る。あの時見た木のように。
俺たちは、あの後王城へ招待され寝食でもてなされた。結局、王城で寝ることになってしまったのだがこれは今日だけだ。次の日目が覚めると、宿へ帰ると言うと、ガーランドたちは遠慮せずに居てくれと言うが、有難い申し出だけど庶民には合わないという理由で王城を後にした。
「よし、今日は調査もやめて戦闘訓練をしよう」
「戦闘訓練ですか?」
宿の中庭で、ラリンたちを集め戦闘訓練をしようと提案をする。なぜ唐突に戦闘訓練何かをするのかというと、スキルについて不明瞭な点が多すぎるからだ。全てを見通す力は、全てを見通さないことがあるし、よく分からない。それに、戦い方の意見交流をすればより一層強くなれる。
「そう、スキルについて理解を深めようという意味をを込めてやろうかと。 それに、ジンの空手というのも気になるし」
空手とは、拳と足を主に使う拳法でこの世界ではかなりの人気を誇っている。その他にも、体術の限界を超え戦う涼雅拳などがあるが、こっちの拳法はリスクが多すぎるせいか、そこまで人気はない。
「空手のことか? あれはな、魔力を流すような感じで気を体中に巡らせるんや。 そうしたらな、バチコーンな力が得れるで」
「……全然分からん」
ジンから出てきて説明は、抽象すぎて何が何だがさっぱりだった。魔力を流すような感じで気を流すと言われても、その気が何かを分かってないで、スタートラインにすら立つ資格を得られてないのに。
全然分からんと言うと、ジンは胡座をかいて膝の上に手を置いて、目を瞑り指先に意識を集中させると痺れ始めるから、それが気だと言う。今回の説明は、さっきのやつと比べると分かりやすかった。
言われた通りに地面に座り、胡座をかいて目を瞑る。2分ぐらい過ぎた時に、指先に何かが集まるのを感じる。……これが気。
「痺れ始めたら、指先をぴょんと前に弾いてみ」
痺れ始めていたので、指先をぴょんと弾くと微弱な風が発生し中庭の草を掻き分けていく。
「カイン成功や。 これが気やで。 それを応用したのが、空手や。 俺が主に使ってるのは、憲兵式の空手やから、クリン・アルバルクが使ってたのとはかなり違うけどな」
その次にラリンも成功し、2人とも気がなんたるかを理解する。よし、俺もこの調子でスキルを理解しよう。
「2人とも俺を殴ってしようとしてくれ」
「……頭とち狂ったか? カイン」
殴ってくれと言う俺を、心配そうに見つめ頭がとち狂ったか?と言われるが俺は至って正常だ。
「いや、違うんだ。 全てを見通す力がどうしたら機能するか知りたくて。 発動するなら、俺はそれを避けられるから思っいきりきてくれ」
そういう事ならとジンは喜んで殴るといい、容赦なく拳を顔にめがけて飛ばしてくる。……全てを見通す力は発動しない〜。
俺は拳をもろにくらい、後ろへ吹っ飛び地面に倒れ伏せる。ラリンが慌てて駆け寄ってくる。いてて、頬っぺへこんでない?あまりの痛さに、頬がへこんでしまったのではないかと、錯覚する。
「ラリン、頬っぺへこんでない?」
「へこんでは無いですが、すごく赤くなってます」
「良かった。 よし、次だ! ラリン殺す気で俺を殴ってくれ!」
「えぇ!? 殺す気でですか?」
「あぁ、殺す気できてくれ」
ラリンは少し――いやかなり戸惑っていたが、心を決めてくれたのか拳を握りしめ凄い殺気を放つ。あ、これ本当に死ぬかも。その殺気に俺は死を直感する。
殺気の籠った拳の軌道は俺の顔!それは分かっていたのだが、頭の中にどんな風に飛んでくるのかが、流れ込んで来る。発動した!
俺は、全ての見通す力が発動し殺気の籠った拳を避ける。
「なるほど。 発動条件が大体わかった」
「本当ですか?」
「あぁ、殺気があるかないかの違いだ。 ジンの拳は殺気は籠ってなかった。 しかし、ラリンの拳には明確に俺を殺すという殺気が籠っていた。 後者の場合は、ちゃんとスキルが発動したんだ」
今までスキルが発動しなかったのは、殺意が無かったから。発動条件が分かったのはでかいぞ。これで、戦闘が有利になる。
その後は、ラリンの弓術の練習と俺は空手の練習をしていた。
◇◇
全てを見通す力が、解明されました。
「思ったより早かったな。 というより、疑問はあったのになぜ今頃。 まっ、どうでもいいか。 試作機もそろそろ投入出来そうだ」
ではまた。




