三十八話 :欺け演劇
短いですけど、ここが終われば長くなります。
カインから、監視を任されて二日目。今のところ特に、異常はなしと。一応眼鏡で確認してみるか?この眼鏡がどこまで通用するかは分からんが、やってみる価値はあるやろ。
……うん。何も見えない。聞いとくべきだったな、どこまで通用するのかを。
まあ、ええわ。今解決しないことを考えとっても意味は無いからな。おっと、動き出した。
ドルゴスは、腰を曲げ執務室から何処かへ行くようだ。ドルゴスの歩幅に合わせ歩いていると、部屋に入るのが見え、バレないようにこっそりと入ると中は本がズラっと置かれていた。
なんや、ここ?城の図書館みてえな場所だな。ちっと狭いけど。
王城の図書館、とまではいかないが本の数はそれなりにある。それのどれもが、医学や魔法、錬金術などに関する本ばかりだった。
一つの本をドルゴスは、魂がそこに取られたかのように、魅いっていた。
……いつまであの本を見てるんや。
ドルゴスは、もう何時間もあの本を見ており動く気配も無かった。昨日はこうではなかったから、決まった一日を送っているという訳では無さそうだ。
「……行くかの」
本を閉じ、椅子から立ち上がりこちらへ向かってくる、慌てて隠れ部屋から出る。
「……おや、カイン達じゃないか。 今日は二人なのかの?」
部屋から出ると、ドルゴスとカイン達が喋っていた。俺に気付いたカインが、任せろと口パクで伝えてくる。
「えぇ、今日はジンとは別の行動を取っているんです。ドルゴスさんから頼まれた調査はジンに頼んで、僕達の方は叡智化した魔物の調査に行っていたんです」
「そうじゃったのか。 なら、いい時間じゃから先にご飯をしよう」
上手いこと誤魔化してくれ、難を逃れたのか?まあ、面倒臭い事にはならなかった。俺も少ししたら、食堂へ向かおう。
「おっ、食堂から楽しそうな話し声といい匂いがしたから来てみたら、みんな先に飯食べてたんか!」
全ての事情を知っているが、白々しい演技をしてみせる。
「おや、帰って来たのかね。 ほら、ご飯を食べるといい」
「そうするとしますか! 腹ぺこや!」
大袈裟にわざとらしく、椅子に座り飯を食べ始める。
ドルゴスを疑ってない演技を、俺達はしている。演劇をしているのを知らないのは、観客のドルゴスだけだ。
飯を食べた後は、部屋に帰り一日の報告をカインにする。今日はちゃんと、ラリンも参加していた。昨日参加できなかったことを、かなり悔やんでいたみたいだったからな。人一番はっきりって聞き耳を立てていた。
さっ、明日も頑張りますか!
◇◇
「厄介な、虫たちを招き入れてしまったみたいだ。 これじゃあ、魔王様に申し訳ない。 しかし、今処分するのは早計だな。 もう少し泳がせよう」
ではまた。




