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三十三話 :アルリット・リアル

 昨日の奇妙で残酷な事件から一日が経ち、俺達はとある食堂に集まっていた。


「皆に急遽集まってもらったのは他でもない、昨日の魔力の痕跡の解析の結果報告だ」


「時間がかかる言うてたのに、えらい早いの」


「君の話を聞いたら、いてもたってもいられなくてね、急ピッチで進めたよ。 あ、でも早く進めたからって適当に解析はしてないから安心して」


 フィリルの目の下には、クマが出来ており夜通し魔力解析を行っていたのが伺える。

 魔力解析等、聞いたことも無い芸当なのだがそれを難なくやり遂げてしまう、フィリルは本当は何者なのだろうか。


「それで、結果はどうやったんや」


「解析の結果、どす黒く死念渦巻く魔力が検知できたよ。 そして、この魔力が色濃くある場所、それがこの魔力の持ち主のアジトとなるね」


「でも、魔力は見えないから確認の仕様がないです」


「いい事に気付いたねラリン。 その通りだ、魔力は普通可視化は出来ない、私は例外だけどね。 そこで君達には魔力を可視化出来るようになるアイテムを持ってきた、これをかければ魔力が視認出来るようになる。 試しに昨日の魔力が入った瓶を見てもらう」


 フィリルから貰った眼鏡をかけ、昨日の魔力が入っている瓶を覗くと、どす黒く渦巻く靄が見える。汚いという言葉がお似合いだ。

 魔力を可視化する眼鏡なんて一体どうやって作ったんだ、不思議だ。


 魔力の流れを完璧に把握している魔法使いは少なくない。

 しかし魔力を可視化出来る魔法使いは居ない。いや、ある一人を除いては居ないとされている。


 アルリット・リアル。クリン・アルバルクが生きていた時代一緒に冒険をしていたとされている、人物だ。


 アルリット・リアルは、魔法使いとして有能で人に優しく慈愛に溢れた人物だと、書物には書かれている。

 そんな天才がこなせた技を、フィリルは眼鏡に魔力付与としてやってのけてしまっている。魔力付与も難しいはずなのだが。


「フィリル……前々から思ってたけど何者なの? 魔力を可視化出来るアイテムを作り出したり、魔力無効化の防具を作ったりと、何者なの?」


「何者か、そうだね。 私は昔から魔法が好きでね、色々な書物を漁っては、実践をして上手くいかなかったら、また思考を繰り返し上手くいくまでやる。 そんなただの魔法研究好きさ」


 そう語るフォリルの目には、嘘偽りの無い光が輝いていた。本当にこよなく愛しているのだろう、魔法を。

 だからこそ、魔法もフェンリルに微笑み色々な成功を収めている。封印の件は失敗して、自分で封印されてたけどな。


「はは、ただの魔法研究好きか、封印の件は失敗してたけどね」


「なっ! あれは難しいんだぞ! しょうがないだろう」


 フィリルは腕を組み、少し不服そうに言う。


「カインさん、どうしますか? 私達は、これから二つの調査を並行してやらなければならない事になりましたけど、どちらか優先しますか?」


 確かにラリンの言う通りだ、俺達はこれから二つの調査を並行しなければならなくなった。優先すべきかなあ……凄く大変なことになってしまった。


「カイン達はこれから、色々なところ回るんやろ? 町を回ってたらソイツらの目撃情報も聞けるかもしれないし、 行く道中で叡智化した魔物とアジトが見つかるかもしれないからな、並行したらどうや?」


 確かにジンのやり方が効率的かもしれない。並行してやることにしよう。そうした方が、早く片付くかもしれない。


「よし、それでいこう。 それじゃ、ジン行こうか」


「おうおう、行こうかの……って、何言うとんねん!何サラッとパーティーに誘ってるんや!」


「シルアさんの仇討って、罪償わせてやりたいんだろ? なら一緒に行こうぜ」


 ジンをパーティーに誘うと、面を食らったような顔をして椅子から転げ落ちそうになる。誘いを受けてくれたら、賑やかで楽しいパーティーになる事だろうな。


「せやけど、ええんか? 俺が着いて行っても」


「全然大丈夫ですよ、むしろ大歓迎です」


 少し申し訳なさそうにするジンの言葉を、真正面から受け止め快く了承するラリン。優しさの塊の少女は、優しく微笑みジンを歓迎する。


「なら、その犯人を捕まえるまで同行しようかな、俺も一応は王子やし、そんな長くはおられん。それでも、よろしくなカイン」


「おう!」


 ジンも王子という立場上、長くはいられない。その為一時的なパーティー介入となる。


「フィリルもどう?」


「私は魔法の研究がしたいから、お断りしておくよ」


「じゃ、また何処かで会って、次こそは色々と話そうよ、今回は色々とありすぎてゆっくりと話せなかったからね」


「あぁ、次こそは語り明かそう。 時間を忘れて」


「それじゃあ、名残惜しいけど解散だね。 また会おう」


「研究の結果教えてくれよ」


「勿論さ」


 流れに乗ってフィリルも誘うが、魔法の研究がしたいと言われ、優しく断れてしまった。

 何処までも、魔法を愛しているから仲間にするのは難しそうだ。次会った際は、時間を忘れ語り明かすことを約束しフィリルは食堂を後にした。


 俺達はフェンリルから貰った眼鏡をポケットに入れ王城へ向かう。

ではまた。

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