二十九話 :爆弾
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ドラゴンが飛来されと思われる海岸へと向かうと、そこには巨体な身体を上げこちらを静かに見るドラゴンが居た。
俺がここに来ることを最初から察知していたかのように、一点にこちらを見つめていた。
海岸の被害状況は、遊びに行った時と何も変わっておらず何の為飛んできたかは不明瞭だ。
「静かですね……」
ラリンが息を飲みそう言う。
ドラゴンは静かで敵意が無いようだった。
「恐ろしい程に静かだな……」
「敵意は無いんでしょうか?」
「分からない、敵意は今の所なさそうに見えるが決めつけるべきでは無い。 まだ様子を見よう」
静かに佇むドラゴン依然としてその場を動こうとはしなかった。
俺達は少し離れた所から観察をしている。あまり近付きすぎるのも危険だ。
「坊主達ー! 大丈夫かー!」
少し離れた後方から、ジンの声が聞こえる。
それを合図のように、ドラゴンが宙へと飛び上がる。
頭の中に一つ先の未来の映像が、流れ込んでくる。
ジンがここに到着したと同時に放たれる炎の渦巻き、それは俺達を標的に放たれていた。
「ラリン! ジン! 俺の後ろに隠れて! 早く!」
「は、はい!」
「お、おぉ!? 分かった!」
来る最悪の状況を回避すべく、魔法無効の装備を付けている俺の後ろに隠れるよう指示する。
着いたばかりのジンと、ラリンは状況が呑み込めてなかったようだが後ろに隠れる。
「神魔法の練達者発動! セイクリットウォール!」
MPを多量消費し、多重光防御壁を作り出すがこれでも二人を守れるかは定かでは無い、けれど今はやれることを総動員し二人を守る。
「ガァァァ!」
ドラゴンの口から、炎の渦が放たれ、作り出された壁を打ち壊すかのように、ドラゴンは炎の渦の威力を底上げし一枚、また一枚と破壊されていく。
足に全ての筋力を集中させ耐えるが、多重光防壁は意図も簡単に壊されてしまう。
残り一枚の所で、炎の渦の猛攻が止まり何とか凌ぐ。
力の差は圧倒的だ。ただ守る事しか出来ずに、反撃を許されなかった。
「はぁはぁ……なんとかなった」
「大丈夫か! 小僧!」
「大丈夫さ、まだやれる」
残りのMP残量は少ないだろう。鑑定士のスキルを使おうにもMP消費をしてしまう。
ここから、あのバケモンと真正面から対峙するんだ。
こんな所で貴重なMPを割く訳には行かない
スキル――神足通、二代目剣聖、剣の使い手、全てを見通す力、神魔法の練達者、常時発動。
――警告――MP消費が激しくなります。体への負担があまりにも大きすぎます。それでも発動しますか?
当たり前だ。このスキルの使い方は、あまりにも危険だからと連合国から禁止が出てくるぐらいヤバいけど、俺は今それをしなければこのバケモノには勝てない。
――スキル常時発動します――
心臓が大きく波打ち、血液が早く循環するのを感じる。
あまりにも、巨大すぎる力に体が付いていけずに体が危険信号を出してるのだ。
それでも、やらなければ……皆を守らないと。
「行くぞ皆!」
「おう!」
「はい!」
空を優雅に飛び、虫と遊ぶようにドラゴンは火球を吐く。
全てを見通す力で避け、地面を抉り神通力でドラゴンと同じ土俵に立つ。
お前だけが空を飛べる訳では無い。俺も飛べるんだ。
「……お前とお空の楽しいお時間は楽しめそうには無い。 早い所ケリをつけさせてもらうよ」
「ガァァォ!」
「まあまあ、自分の特権が奪われたからってそう怒んなよ」
光の刃――二代目剣聖の力を振るうがドラゴンに負傷が見れなれない。
まるで打ち消されたかのように、光の刃は消え去っていた。
「……! 技が効かない!? 」
「カインさん! 弓矢も通りません!」
地面から援護を続けていた、ラリンの弓矢も通らないという、鱗も硬くて魔法も無効化。つまり、神足通ですり抜け攻撃も効かないときたか。
どうやって勝てと言うんだよ……。
「坊主! これを奴の口に放り込んでやれ!」
ジンが一つの黒く固まった何かをこちらへ投げ飛ばす。
ドラゴンの攻撃を避け、投げられた物をキャッチするとそれは爆弾だった。
「爆弾!?」
「外が硬いんなら、 柔らかい中を狙うのが一番や! それを放り込んでやれ!」
なんておぞましいことを考えるんだ……。
でも、今はこれしか手がない。やるか。
「ほらほら、ドラゴンさん、さっきの強い攻撃打ってきてよ」
「ガァァァァオォォォ!」
煽られたドラゴンは怒り心頭し、口を開け炎の渦を打つ準備の構えをとる。その瞬間口に爆弾を投げ入れる。
「そいやぁ!」
神足通を解除し、地面へ降り爆発に巻き込まれないようにする。
アイツは炎を扱う。つまり、自分で技を打った瞬間死ぬって訳だ。
「セイクリットウォール!」
多重光防壁を作り、爆風に備える。
「ガォォォ!」
炎の渦が放たれる、その瞬間ドラゴンの腹が爆発する。ドラゴンはよろけ、飛行能力を維持できなくなり急降下する。
「よし! 作戦成功や!」
「でも、ドラゴンがあれぐらいでくたばるか?」
「爆弾を口にほおりこまれて、生きてる訳ないやろ」
ジンは、勝利を確信したように言う。
だけど、俺は違かった。爆発する瞬間、ドラゴンは自ら落ちたように見えた。
それが気の所為なのか、どうなのかは分からないが警戒は解かない。
ドラゴンに近付くと、息はしておらず死んでいるようだった。
「ほらな、死んでるやろ」
「……いや、まだ生きてる!避けろ! 」
ドラゴンが立ち上がり、後ろへ飛び下がる。
「しぶとい奴や!」
『もういい、帰って来い。 我が愛おしのペットよ』
「グルル……」
翼を広げ、ドラゴンは何処かへ飛び去ってしまった。
なんだったんだろうか……。
「勝ったのか……?」
「一応そうみたいやけど」
「あのドラゴンまだ戦えそうでしたね……まるで私達の力を測るためにやって来たような」
確かにアイツはまだ力をセーブしていたように見える。技も同じものだけを使い、攻撃も単調だった。
誰かに命令されて動いているかのように、同じ動作をしていたな……。
でも、ドラゴンを手懐けられていたのは遥か昔に存在していた、魔王だけと言われている。
誰かの手先という線は薄いだろう。
何はともあれ、今は一旦町に帰る方が優先か。
「皆、町に帰ろう。 あっちも心配だ」
「そうですね」
「そうやな」
スキル常時発動解除。
スキル常時発動を解除します。
解除した途端に、頭がぼやけ足に力が入らなくなり地面に手を付く。
はは、本当にヤバいんだな……あれ。禁止されている行為をしたんだ、当然の見返りだろう。
「カインさん! 大丈夫ですか?」
「ちょっとふらっとしただけ」
「なら、いいんですけど」
ラリンが慌てて、近付いてくる。
ふらっとしただけと誤魔化し、立ち上がる。
ここで膝を折っているわけにはいかない。早く町の様子を見に行こう。
ではまた。




