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二十四話 :地獄のシャワー

Twitterにて、更新更新報告してます。

作者ページからひとっ飛びできます。

「はぁ〜疲れた」


「遊びすぎちゃいましたね」


「遊びすぎた……。 もう足が棒だよ」


「肌の色も棒と同じの茶色に、なっちゃっいましたね」


「こんがりだな。 こんなに茶色くなるとは思って無かった。 少し休憩したら、宿に戻ろうか」


 海が夕日でオレンジ色に染まった時、俺達の肌色は茶色に染っていた。

 太陽の光を浴びすぎたら、茶色くなることは知っていたがこんなにも黒くなるとは、予想を遥かに上回ってきた。足も泳ぎ疲れて、棒のようにヘロヘロだ。


「焼けて帰ってきたね〜! ほら、シャワーあるから浴びて来な。 水着は洗面所に置きっぱでいいよ。 後で私が取りに行くから、それと覚悟して入りなよ」


「覚悟って一体なんのことなんだ?」


「もしかして、シャワーがとてつもなく熱いとかですかね?」


「昨日入ったけど、そんなことは無かったからなあ……」


「ん〜答え合わせは、入ったらですね」


 宿へ帰ると、茶色に染まった俺達を見た受付のおばさんは快活に笑いシャワーへ入るよう促す。


 最後に、覚悟をして入れと言われたがシャワーに覚悟する事など一個もないはずなのだが、一体何を覚悟すればいいのだ?というそんな疑問はシャワーを浴びた瞬間に解決されるのであった。


「あ……いてて! いった! 何だこの痛さ! このシャワー針なのか!? いや……普通のお湯か」


 シャワーを出し背中に当てると、針を刺されてるような痛みが走り、バタバタと足踏みをするが出ているのは昨日と全く同じのお湯だった。


「いやあ、痛かった」


「お兄ちゃんやれたっていう顔してるね」


「受付のおばさん、シャワーがめっちゃ痛かったんだが、一体あれはなんなんだ?」


「肌が焼けると、あぁなるんだよ。 だから、皆覚悟してシャワーを浴びるんだ。 ほら、後ろにもたっぷりやられたっていうお嬢ちゃんがいるよ」


 身体中をお湯という名の針に刺され、げっそりして受付の所へ行くと、おばさんがまたもやゲラゲラと笑いながら何故あんなにシャワーが痛いのかを教えてくれた。


「うぅ……痛いです。 もう私シャワー浴びたくないです」


「ラ、ラリン、気持ちは分かるがシャワーは浴びないと駄目だぞ?」


 そして俺と時同じくして、シャワーの針に刺されたラリンが涙目になりながら出てくる。


「ハッハッハ、お嬢ちゃん大丈夫だよ。少ししたら痛みは無くなるよ、だから今はご飯を食べておいで」


「そうします、カインさん、この沈んだ気持ちをご飯にぶつけに行きましょう」


「そうするか」


 シャワーの事を忘れるために、俺達は食堂へ行く。


「はぁ〜お腹いっぱいです!」


「痛みのことをぶつけられたか?」


「そりゃもう沢山ぶつけてやりました!」


「そりゃよかった」


 食堂へ着いたラリンは、海へ行き沢山遊んだ事も重なったのか、いつもは一皿で終わるのに今回は三皿以上食べていていた。

 ご飯にシャワーの鬱憤をぶつけられたのか、ラリンの顔はスッキリしていた。


「ベットがフカフカで気持ちいがいい……で……す」


「ラリン? 寝っちゃったか。 おやすみ」


 部屋に着き、ベットへ横たわったラリンは1秒とも経たないうちに夢の中へ飛び込んでしまった。

 布団をかけ、俺もベットに横になる。


「……寝れない。 ちょっと外にでも行くか」


 横になるが、一向に寝れずに目が覚めていた。

 少し夜風に当たりに行くことにし、ラリンを起こさないようにそっと部屋を出る。


 受付にはいつものおばさんは居なく、あるのは暗く静まり返った海の漣だけが聞こえる海の家だった。


 昼間に嫌ってほど遊び見た、海へもう一度行く。


 海は面白いな。朝の顔や昼の顔や夕方の顔、夜の顔を持っている。人間も色々な顔を持っているが、海も持っているようだ。

 今は海には夕方に見た夕日の道は無く、星と月に照らされた何処か物寂しい海が漂っている夜の海になっていた。


 星が綺麗だな、ら町の灯はここまで届かず、星空が煌めき本来の美しさを放っていた。


「カインさん。 こんな所にいたんですか、部屋に居ないので探しましたよ」


「ラリン起こしちゃったかな?」


 一人で星空を見上げていたら、後ろから優しい鈴のような声が聞こえ振り向くとラリンが立っていた。

 起こさないように出てきたつもりだったけど、起こしちゃったのか?


「いえ、目が覚めてしまったんです。 目が覚めて横を見るとカインさんが居ないので、本当に心配したんですよ」


「ごめん、寝れなくてちょっと外に出ようかなって思ったんだ。 すぐに帰るつもりだったんけど、星空が綺麗で見惚れていたんだ」


「綺麗ですね、あそことあそこの星引っ付いてますね。 家族みたいですね」


「家族か……」


 その星は寄り添い合い、互いが互いを支えてるように見えた。

あの星たちは、家族なのだろうか。どんな会話をして、どんな風に過ごしているのだろうか、楽しく笑って過ごしてるのだろうか。俺の家族は……いいや、もう考えるのはよそう。


「……家族ってどんなのなんでしょうかね」


「ん?」


「あ、いや、そろそろ眠くなってきちゃいました」


「俺も眠くなってきたし帰るか」


 ラリンが何かボソッと言った気がしたが、良く聞こえなかった。ズボンに付いた砂を払い、海の家へ帰る。

ではまた。

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