二十二話 :リークムスイア
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「それじゃあ、お世話になりました」
「行くのだな。カイン達」
前に進む為に、新しい調査をするためにサイレート王国を離れることにした俺たちは、玄関ホールに集まっていた。
「はい。 ここでずっと立ち止まってたらケイヒンに怒られてしまいそうなので……」
「ハッハッハ。 それもそうだな。 それで次に行く場所は決まっておるのか?」
「いえ、まだ何も」
「なら、これを持って行きなさい」
「これは?」
「リークムスイアという国への紹介状だ。 これを憲兵に見せれば直ぐに通してくれることだろう。 その後は、リークムスイアにある王城へ向かうといい」
リークムスイアという国へ向かった方が言いと言う王様は懐から赤い封緘がされた、紹介状を取りだし俺へ渡してくる。
紹介状とは、国から国へこの人を紹介しますよ。というもので、その人自身の安全性を示すものでもある。
そのためこれを一枚持っていれば、検問も軽々と通過することが可能だ。どんなに怪しい格好をしていようが、これを持っていれば通過することができる。何と便利な物なんだ。
「王城へですか? でも行き方が分かりません」
「大丈夫だ。この地図を持って行きたまえ。 それとリークムスイアは私の知人の国だ。 すぐに話が通ることだろう。 安心したまえ。 それとここからリークムスイアは近い。 半日もあれば着くことだろう」
「何から何までありがとうございます」
「気にする事はない。 世界を救おうとしている者達に、手を貸すのは当たり前のことだ」
「カイン。 暴君から私を守ってくれてありがとう。 そのお礼と言ってはなんだが、外に馬車を手配した。 それに乗ってリークムスイアへと向かってくれ」
王様が一通り話終わると、横に居たアザレアが口を開く。なんと、アザレアは馬車を手配してくれたと言う。それは有難い。歩いていくのは少々酷なものがある、馬車があるかないかだけで、雲泥の差だ。
「まじか! ありがとな、アザレア。 後、もう暴君に突っかかったりするなよ」
「心に命じておこう」
「私からはこれを。 サイレート王国名物のバナレ煮込みです。 旅の道中でお腹が空いた時にでも、お食べ下さい。 余計なお世話かもしれませんが、レシピも付けておきました」
「ファンガさん……ありがとうございます。 いい匂いがして今から食べたい気分ですけど、我慢して馬車で食べますね 」
次はファンガさんが、サイレート王国名物のバナレ煮込みをくれる。
俺達がここに来た時に、食べようとしたものだ。まあ、アザレアを助けて結局食べれなかったが。
それにこの香ばしい匂い。今すぐにでも食べたいが、馬車の中で食べることにしよう。今は我慢だ。
「あっ、えっと。 皆さん短い間でしたけどありがとうございました! また何処かでお会いましょう!」
「それじゃあ行こうか。 皆さん行ってきます」
「行ってらっしゃい」
ラリンの言葉を最後に、サイレート王国を後にする。アザレアが手配してくれた馬車に乗り込み、リークムスイアへと向かう。
王様の話では、近くの国だから半日で着くと言う。出たのが朝方だから。夕方頃には着く事だろう。
「リークムスイアってどんな国なんですかね? サイレート王国みたいに、人で賑わった国なのでしょうか?」
「どうなんだろうなあ……ナロス共和国から出たこと無かったからなあ。 外の世界はさっぱりだ」
「王様は半日で着くと言っていたから、もうすぐ着くはずだよ。答え合わせもすぐそこだ」
馬車の中で、未だ見たことない国の形を想像し話し合う。ラリンの言う通り、人は賑わっているだろうなあ。つい最近までずっとナロス共和国から出てなかったから、分からないけど。
「あっ、見えてきました!」
日もそろそろ沈み出した頃、俺たちはリークムスイアへと着く。
「ここを通過するには、冒険者証明書か。 商人証明者を提示してもらう必要がある」
「あ、えっと。 これを」
「これは……サイレート王国の!? 失礼しました! 通り下さい!」
着くと同時に、門の憲兵に止められるが、王様から貰った紹介状を見せると、憲兵の態度が豹変し腰は低くして、頭を下げ俺たちを通してくれた。
サイレート王国という虎の意を借りてる俺は、申し訳ない気持ちになる。
「なんか申し訳ないですね」
「申し訳ないな……」
そんな気持ちを抱えて、リークムスイアへと入ると夕陽に照らされた青色の海が眼前に広がる。
青とオレンジ色の混ざりあった綺麗な色が、夕陽に反射し綺麗に光を灯す。
「あっ、あれ! 海ですよ! 海! 初めて見ました」
「広いなあ〜! あんなに青いのか! 王城へ行った後に行ってみるか!」
「良いですね、行きましょう!」
王城へ向かうため、馬車を走らせていると魚を売っている露天があちらこちらに広がっていた。
こんな光景は、サイレート王国でもナロス共和国でも見た事は無かった。 これが町特有の光景なのだろう。
町の人達は皆活気的で、肌はこんがりと焼けていた。
「リークムスイアも人が多いですね。 魚も沢山売ってますし。 漁業が盛んな国なのかもしれませんね」
「確かにそうだな。 それでえ〜と、王城へ向かうにはここを真っ直ぐ行って、次は左に行くと着くと」
貰った地図を片手に、王城へと着く。サイレート王国とは違い、白いレンガ造りで豪華絢爛とはかけ離れていた。
しかし、そんな質素でも遠目で見ても城と分かるほどにはデカく作られていた。
「ここですね」
「ここだな」
「待て、ここに何の用だ?」
「サイレート王国の紹介で。 ほら、これです」
城門の憲兵に止められるが、検問所と同じく紹介状を見せ通してもらう。
城門の憲兵は、検問所の憲兵は違い慌てずに冷静に対処する。
「失礼しました。 お入りください」
「失礼します〜」
通された俺達は、玄関ホールへ入る。
入ると、黒髪で片目には眼帯をし、体格はがっちりとした男が立っていた。
「ようこそいっらしゃい。 そこで待ってな小僧達。 今親父のやつ呼んでくるから」
「は、はい」
どうやら、俺らのことを知っているらしく親父を呼ぶに行くといい姿を消してしまった。
親父……リークムスイアの王様のことか?つまりあの人は、ここの王子ってことになるのか?
悪い人では無いのか?
「カインさん、あれ誰でしょうね? それにあの腰に刺さってる剣、強そうですよ」
「俺達のことも知ってるっぽいし、親父って呼んでるから王子様じゃないのかな?」
眼帯した男と共に、赤い絨毯が敷かれた階段を降りてくるのは、少しふくよかな体型をした王様らしき人だった。
「おぉ、そなた達がサルビアが言ってた子達か。 本当に若いのう」
「親父、若いかどうかどうでもええんや。 力があればそれでいいんや」
「ジン。 またそんな事を言って。 力があっても、慢心すれば負ける。 何度言ったら分かるんだ」
どうやら、眼帯の男はジンと言うらしい。そして、力があれば全てを良しと思っているらしい。
王様は、力があっても慢心すれば負ける。そう言うがそんな言葉には耳を傾けようとしない。
力があっても慢心すれば負ける。それは確かな事だ。
俺はそれをこの身をもって味わった。
だから、このジンという人にもそれは分かって欲しい。後悔する前に。
「そんな事ないわ。 力があれば絶対に勝てる」
「ジンさんと言いましたっけ? 力があれば絶対に勝てる。 それは違いますよ」
「なんや、小僧。 会ったばっかしなのに生意気な口聞くのう。 お前何が分かるんや?」
「俺には分かるんです。 この身をもって経験しましたから。 どんなに強い力を持っても、大事な人は守れない。 一つの慢心で、全ては砂のように崩れるんです。 力は全てじゃない」
「……もうええわ。 めんどくさい」
めんどくさいと言い、ジンは階段を登りどこかへ行ってしまった。つい、熱くなってしまった。でも、力は全てでは無いのだ。
「おい、ジン! すまないの。 アイツは昔から、ああでね。 気にしないでくれ」
「俺こそ、ムキになってすみませんでした。 あの、これ紹介状です」
「うむ、確かに受け取った。 自由に調査してくれ。 それとこれを。 宿の受付にこれを見せればどこの宿でも、泊まれる。 是非使ってくれまたえ」
王様に紹介状を渡すと、金色の紙を渡される。この紙は、どんな宿でも顔パスが出来る便利なものらしい。俺は、どうやら便利な物に遭遇しやすい体質らしい。
「ありがとうございます」
◇◇◇
「力があっても負ける。 そんなこと分かってるんや……。 あの時剣を使ってなければ、アイツを救えたかな」
ではまた。




