二十話 :ありがとう
言い忘れてました。十八話を全て書き直してるので、御手数ですが見てください。
そして今回は短いです。本当は前の話でここまで入れようとしたんですが、気力が持ちませんでした。
Twitterにて、更新報告してます。作者ページから飛べますのでどぞ。
「ラリン。 ケイヒンを頼んだ。 俺はあの鉄クズを、スクラップにしてくるからよ。 ケイヒンこの大剣借りて行くよ」
ケイヒンをラリンに預け、傍らに落ちていたケイヒンの大剣を手に持ち鉄クズの元へ歩き出す。
壊すんだ……アイツを。 アイツがケイヒンを……。
違う俺が、ケイヒンを殺したんだ。俺が殺したんだ。鉄クズに対する憎悪と、自分に対する憎悪が入り交じる。
「は、はい。 分かりました」
「ケンセイ、マリョクヘンカカクニン、マホウムコウカフカノウ」
「何訳の分からない事を言ってるんだ。そんな事より、壊される覚悟は出来たのか?」
「テッタイスル」
「……させるかよ」
鉄クズは訳の分からない事を言い、逃げようとするが大剣を背中に突き刺し、動けなくする。
だが、致命傷は与えてない。まだ動けるはずだ。
何回も何回も刺し、ズタズタにしていく。完全に動きが止まったとしても、俺の怒りは憎悪はこんなものじゃ消えない。消える所か、コイツを目にすると増す一方だ。
「……ギ……」
「まだだよ。 まだ終わらない」
「……カインさん。 カインさん! もう終わってます! 目を覚ましてください!」
狂ったように刺す俺を、ラリンが制止する。
それでも俺は、手を止めようとしない。コイツはまだ生きてるんだ。止まっているとラリンは言っているが、コイツはまだ生きている。動いているんだ。
「……ラリン? 何言ってんだよ。 まだコイツは生きてるよ」
「もう動いてません! いつもの優しいカインさんに戻って下さい!」
「何を言ってるんだ。 いつもの俺じゃないか。 何も変わっちゃいないさ」
俺は変わっちゃいない。何も変わってないさ。それなのに、ラリンは何を言っているんだ?おかしいよ……。俺は変わってないんだ。何もおかしくないんだ。
「……馬鹿! 今の自分の顔を見て見て下さい! 黒い血に顔が穢れて、ケイヒンさんが望んでいた笑顔じゃあ、ありません! 今のカインさんは悪魔ですよ!」
俺の頬を叩く音が静寂に包まれた街に響く。
左頬が熱くなる。この熱は家から出てる火事の熱さではない。人の温もりが籠った温もりだ。
その温もりで俺の目は覚める。
「……ラリン。 俺は俺はどうしたら良かったんだ。大事な人を守れなかった……。 剣聖の力に胡座をかいて大事な人を失ってしまった。 この街の人にも顔向けできない。 そんな俺は優しいって言えるのか……?」
前触れなく起きた大切な人との別れを、現実から目を背けることによって無かったことにしようとした。
だけどラリンが、そんな俺を優しく手を引くように引き戻しくれてた。
「えぇ。 言えます。 疲れてると言っても、魔物の調査に手を貸したり、困ってる人を見捨てられないカインさんは凄く優しいです。 馬鹿が付く程にです。 私達は、まだ一ヶ月ちょっとしか一緒に居ません。 でもそんな短い期間でも、カインさんの魅力は私に十分伝わってくるほど、カインさんは良い人ですよ。 私が保証します」
「……ラリン。 ありがとう」
目からは、大粒の涙が頬を伝わり地面に落ちる。この涙は、感謝なのかそれとも悲しみなのか。それは分からないが顔に付いていた、黒い血は流され、頬を伝う透明な涙が流れる。
スキル―復讐の闇鬼が解除されます。
称号 鬲皮視に近づきし者
「わわ! カインさん……!? カイ……ン」
スキルが解除されると、全身から力が抜け言葉が遠のく。
……声が遠い。聞こえない。何が起きたんだろう。
その思考を最後に、全ての思考はシャットアウトされる。
◇◇◇
「ふーむ。 魔法の無効化は出来たが、魔力の変化か。それは予想外だったな……。 剣聖とは実に面白い。 前の剣聖の力も弱くなってきた。 そろそろ私の力の全ても戻ってくるだろう。 その時はカイン。一緒に遊ぼうか」
◇◇◇
二代目剣聖が、貴方の力に近付きました。
貴方の力が、弱くなってきています。
「ク꙲ソ꙲…꙲…꙲ア꙲イ꙲ツ꙲の꙲力꙲も꙲戻꙲っ꙲て꙲し꙲ま꙲う꙲。 後꙲輩꙲…꙲…꙲耐꙲え꙲て꙲や꙲る꙲頑꙲張꙲れ꙲よ꙲…꙲…꙲」
ではまた。




