十七話 :優しさは悪じゃない
あ、一時に投稿すると言ったのに過ぎてしまいました。許して下さい。お詫びに電球あげますから。
Twitter(ファンボ山)にて、更新報告してます。
作者ページから、飛べますのでどぞ。
「昨日のご飯凄かったな」
「そうですね。見た事も無いご飯達がドンドンとテーブルに並べられて、空いた口が塞がりませんでした……。 天井にはシャンデリアというのも、何か普段の生活と違って少し落ち着かなかったです」
「あの、天井は凄かったよな……。 それで、今日は魔物の調査に行くって言ったら、王様が国一番の護衛を付けてくれると言ってたけど、何処だろ?」
昨日の夕ご飯の時、ご飯を食べるからとファンガさんに呼ばれそのまま着いて行くと、天井にはシャンデリアが垂れ机は縦に長く、椅子の背丈は自分の身長の二倍ぐらいある部屋に着いて、余りの凄さに言葉を失った。言葉を失った俺たちの目の前には、見た事も無いご飯達が運ばれてきて、空いた口が五十年ぐらいは空いたままになるぐらいに驚いてしまった。
それで今は魔物の調査に行くと言ったら王様が、国一番の護衛人を付けてくれると言ってくれたためその人を探し中だ。
「あれじゃないですか? 強そうな感じがします!」
「確かに強そうだけど、あんなに派手な見た目をしてるかなあ?」
「人は見た目じゃ分かりません! 私ちょっと行ってきますね!」
「あ、ちょい!」
ラリンが見つけた人は筋骨隆々で屈強な見た目をしており確かに強そうだったが、頭がピンクのモヒカンで頬っぺには星のマークが彫られており、唇には真っ赤なリップがべっとりと塗られた風貌をしていた。流石に国一番の護衛人が、あんなチンピラのような格好をしているわけがないと思ったが、ラリンは見た目で判断してはいけないとだけ言い残し、その人の元へ走って行ってしまった。
確かに人は見た目じゃないが、あれは流石に、チンピラだろう。チンピラにしか見えないよ。
「あの! 国一番の護衛さんですか?」
「ん? 国一番の護衛かって? 勿論よ、私がサイレート王国一の護衛人。 ケイヒン・キンゼルよ。 もしかして貴方達が王様の言ってた子達かしら?」
「はい!ラリン・アルバルクと言います。 あっ、カインさん! やっぱりこの人が国一番の護衛人さんらしいです。 お名前は、 ケイヒン・キンゼルさんと言います」
ラリンの後を急いで追いかけると、驚きの事実がラリンのら口から飛び出して来た。
どうやら、この人が本当に国一番の護衛人らしい。
まじかよ……人は見た目じゃないって本当だな。ごめんなさい。いや、でももしかしたら。っていう可能性もあるよな。どうしたら分かるだろうか……。
あっ、俺鑑定士だった。すっかり忘れてた。
スキル―鑑定士発動。
ケイヒン・キンゼル
HP―2036 MP504
PW―1568 SE―1080
スキル
剛腕
千里眼
筋肉の加護
モヒカン
何だ……このふざけたスキルは?筋肉の加護?モヒカン?なんなんだこれは。
しかし、ステータスはかなり高い。特にパワーが。これが筋肉の加護の効果なのか?
「宜しくね。 ケイヒン・キンゼルよ。 それにしても、こんな小さい子達が魔物の調査ねえ。 勇気あるじゃない。 それにいいガタイしてるわね……少しタイプかも」
「だ、だめですよ!カインさんは、大、大事なパーティーメンバーなんですから!」
「あら? お嬢ちゃん。 そういう感じかしら? うふふ、可愛いらしいわね。 そういう事なら分かったわ。可愛らしいトゥークのために大人しく手を引きましょうかしら。 それで貴方名前は?」
「俺はカイン・ローズベルト。 ケイヒンさん、叡智化した魔物が居そうな場所って分かる?」
「ケイヒンで良いわよ。 最近、ファンボ山で木に奇妙な引っ掻いてできた印が付いていると、街の木こり達が言ってるのよ。 もしかしたら叡智化した魔物の仕業かもしれないわ」
一瞬悪寒のする言葉を言われたが、気にしないで行こう。気にしたら負けな気がする。ファンボ山で奇妙な引っ掛いて出来た印が付いているとの事で、人間の仕業なのか、それとも魔物の仕業か。確かめる必要ありだな。
「そこに案内してもらえるか?ケイヒン」
「勿論よ。 任せてちょうだい」
ファンボ山は、木の生い茂が凄く熱帯地域みたくなっていた。
しかし、そんな環境だからこそか鳥達は楽しく唄を歌っていた。鳥たちが歌う木の一つに、何かを印すために引っ掻いたような傷があった。
「ほら、ここよ。 何かを印すために付けた後みたいなのが、ずっと続いてるのよ。 これを辿ったら叡智化した魔物に辿り着くかもしれないわ」
「そこそこでかい引っかき傷だな。 どんな魔物なんだ……?」
引っ掻き傷は、そこそこでかく付いており、それは魔物の体躯がデカい事を表している。一体どんな魔物何だ。
「デカさ的に予想するなら、キルベークタイガーじゃないかしら? 基本的に一匹狼で生息する事が多い事で有名な子達よ」
「Bランク級か……。 これは予想だが、叡智化してるのなら群れを成し生きているだろう。 他に叡智化した奴らも、天敵と群れを成し暮らしていたりしていた。 キルベークタイガーもその可能性がある」
キルベークタイガーか。Bランク級と認定されているが、ほぼAランク級と言っても過言ではないだろう。ギルドでも、コイツをBにするかAにするかで長い事会議されていたからな。
キルベークタイガーが、群れを成していたらそれこそ地獄だ。早く対処しなければ。
「恐ろしいわね……。 早く対処しちゃいましょ」
木の印が頂上付近で途切れており、行方が分からなくなったがケイヒンが集中するとキルベークタイガーの位置を言う。
「ここで印が途切れてる。 何処へ行ったんだ?」
「少しだけ、集中するわね。すぐに終わるから待っててちょうだい。 ……分かったわ。 この先をずっと真っ直ぐ行けば必ずキルベークタイガー達と、出会う事になるわ」
「分かるの?」
「千里眼でね。 でもこれ、目が乾くから嫌なのよね〜。 取り敢えず向かっちゃいましょ」
千里眼ってそういう効果だったのか。場所を把握するスキルで目が乾燥するのがデメリットということか。メリットとデメリットが釣り合ってないな。
「カインさん。 あそこ見てください。 魔物が居ます」
「どれどれ。 おっ、本当だ。かなりの数がいるな。 見た感じキルベークタイガーだな」
ラリンが指さす方向には、群れを成したキルベークタイガー達が約三十匹存在していた。コイツらが、三十匹か。骨が折れる。早速倒そうと思い、一歩踏み出すがケイヒンに制止され転けそうになる。
「いや、待ってちょうだい。 確かにキルベークタイガーだらけだけど、あんなキルべークタイガー見た事ないわ。 青色の毛並で角が生えている、キルベークタイガーなんて棲息してなかったはずよ。 近縁種かしら?」
「でも、魔物の近縁種が出るのは極稀と聞くけど。叡智化した魔物の影響はそこまでにも、及ぶのか?」
ケイヒンが言った通り、周りとは異色の姿をしているキルベークタイガーが一匹だけ存在していた。
青色のキルベークタイガーを中心に、普通種のキルベークタイガーは群れを成しており、まるで天敵からそいつを守るようにしており、よほど大事なのだろう。
「分からないわ。 倒して素材をギルドに届けてもらいましょう。 そうしたら何かが見えてくるはずよ」
「あっ、私達に気付いたみたいです!」
「耳がいいから気付かれたか! 神魔法の練達者発動! セイクリットウォール!」
耳がいい事を失念していた。隠れていた俺達に一匹のキルベークタイガーが飛び掛ってくるが間一髪の所でセイクリットウォールを発動し、身を守る。
「トゥーク達にいい所見せるのよお! 」
ケイヒンが、背中に担いでいた大剣を外し横に薙ぎ払うと五匹のキルベークタイガーが一刀両断される。残り二十五匹。
「……! 皆さん待って下さい! 赤ちゃんがいます!」
「ラリン! 躊躇う気持ちは分かる! だが、今は目の前の敵に集中しろ! 殺られるぞ!」
ラリンが、キルベークタイガーの赤ちゃんが居るといい攻撃を辞めてしまったが攻撃を続けるように言う。ラリンの、その子を守らんとする心は分かる。俺も助けようと思ったが駄目だった。冒険者とはそういう仕事なのだ。
無惨に魔物を葬り、金銭を手にする仕事だ。そういう仕事なんだ。割り切るしかない。
「は、はい!」
「終わったわね……。 お嬢ちゃん大丈夫?」
青色のキルベークタイガーの、戦闘力は普通のキルベークタイガーより少し上という感じだったが、まだ成長途中というのも有り得る。コイツの角はまだ少しどこか幼い。これ以上成長する可能性も、なくもない。亡くなったキルベークタイガーの赤ちゃんを抱きながら、ラリンは土に埋め謝る。
「大丈夫です。 これが冒険者ですから。慣れないといけませんね。 ごめんなさい。安らかに眠ってください」
「行ける? ラリン」
「はい。 もう大丈夫です。 行けます。 後、スキルも獲得しました。静かなる優しき者」
どうやら、ラリンは先程の戦いで新しいスキルを手に入れたらしい。こんな事でスキルを手に入れたくなっただろうに。
「静かなる優しき者? キルベークタイガーの赤ちゃんを庇おうとしたから、獲得出来たのか?」
「分からないけど、お嬢ちゃんにピッタリなスキルね。でも、一つだけ忠告よ。 貴方のその優しさは、いつかどこかで仇となるわ。 魔物の相手には非情になりなさい。 カイン。 貴方もよ」
ケイヒンの言う通りだ。魔物に変な情を沸かせば殺されるのはこっちだ。非情となり悪魔と化し魔物を殺すしかない。それが冒険者だ。
だからと言って、優しさを完全に捨てろという訳でもないが。
「分かりました」
「分かった」
「うん、よしそれじゃあ。帰りましょうか」
青色のキルベークタイガーの死体を持ち帰り、ギルドへ送る。
ではまた。




