百八話 :盾と矛
吹き飛ばされたカインは体制を整えようと、体を起こそうとする。力をグッ、と入れた瞬間脇腹に激痛が走る。
飛ばされた時カインは受身をとったが、ダメージと衝撃は相殺出来るものではなく直に骨へと到達していた。
何本か骨はいってしまってるが、動けない訳では無い。体に喝を入れ、前線へ復帰する。
「カイン! 大丈夫なのか?!」
「大丈夫、まだやれる」
「無理は禁物ですよ、カインさん」
「無駄口を叩く余裕があるとはな」
振り下ろされた巨躯の斧をセイクリットウォールで防ぐが、紙切れように破られてしまう。かすれば、片手を取られてしまうであろつ攻撃を防ぐ術はない。避けるか、腕を差し出すか。最悪の戦闘が幕を開けていた。
「クソ! これじゃ、勝てねえ!」
「落ち着いてください、隼人さん! 焦ってはダメです!」
隼人は避けてばっかでは勝てないと焦っていた。戦場へ出たことがない人間が臆せずに戦えているのは、遺跡で幾度も恐竜追いかけられていたからだ。しかし、恐怖は克服できたとしても、戦闘の基礎はなっていなかった。
攻めることばかり考え、守ることをおざなりにしてしまう。
「隼人さん、右です!」
「まずは一人」
焦った隼人は敵を見失い、死角を取られてしまった。ラリンが気づいた時にはもう手遅れだった。
斧は、隼人の眼前に近付いていた。負けたくない、死にたくない、自分に何が出来るのだろう。
人は死の間際、人ならざる力手に入れることがある。それが潜在的なのか、一時なのか。人によって、まばらである。隼人の潜在能力は死の直面によって開花する。
「……何をした?」
「……一回死んできた」
「戯言を」
4人には4人に優る秀でた才能が1つあった。ラリンならば、魔法の腕。カインならば剣術。隼人ならば仲間を守れる硬さ。
「お前も一回飛んでおけよ」
隼人の拳は、この世のどの鉱石よりも硬く敵の顔を捉える。金色の甲冑には拳の跡がくっきりとつく。
「……お前らの骨は未来永劫残らないと思え」
ではまた。




