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第六話 攻撃命令

第六話 攻撃命令 




アイカとルクシーを誘拐したと思われるヤツから指示があった場所は金属製品の部品工場と思しき建屋だった。外観はお世辞にも立派とは言えない。ハッキリ言って汚い。

 中に入っても印象は変わらない。機械油の匂いがツーンと鼻に来る。ガラス窓から陽光が差し込んでいるのに全体が黒っぽい。

 それにしても電子錠と言っていたのにあっさり入れたぞ。


『トーリ君、聞こえるか?』


 ヤツからの通信だ。


「ああ。今着いた」

『そのまま奥まで進みたまえ。その先に勝手口があるから外に出てもらう。そこに倉庫があるから入りたまえ。中にある物が君専用のアイテムだ。持てるだけ持っていけ。また連絡する』

「おい! おい! たまには何かしゃべらせろ!」

『……』


 また勝手に話して勝手に切りやがった。


 言われた通り工場から出ると掘っ立て小屋のような粗末な家と言ったら良いのか、あばら家がある。中に入ろうとすると外観とは全く似つかわしくない電子錠扉になっていた。扉だけ厳重にしてもこんなボロ屋、簡単に破壊できる。だが、誰が好き好んでこんなバラックを壊すだろうか。そう考えると意外に良い隠し場所なのかもしれない。

 オレがドアハンドルに触ろうとするとピッと電子音がした。構わず中に入ると――


 そこには多種多様の重火器が置かれていた。勿論、辛うじて携行できるサイズに限定はされていたが。

 全ての武器は我が国の物ではない。他国から密輸されたのか……


 それにしてもやっぱり武器だったか。ある程度想定はしていたが。

 小火器がほとんどないので特定人物へのテロ行為の類ではない。何か中規模か大規模なことを犯人はオレにやらせようとしているのだ。

 とにかく持てるだけ持って行けという指示だから、選ぶしかない。ただ、とても手荷物というレベルではない。仮に一つ持ったとしても街中は歩けんぞ。


『トーリ君、トラックを用意してあるから使いたまえ』

「……え!? おい! お前、どこにいる? アイカとルクシーは!?」

『……』


 ちくしょう! あの野郎はきっとどこかでオレを見ている。オレはたまらず外に飛び出し周辺を得意の生物探知で調べた。

 が、射程外なのか街中で他人物と誤認識してしまうのか、ヤツを見つけられない。

「クソ!」

 オレは地面を蹴った。小石が飛んだ先に軍用トラックがあった。先ほどは気付かなかったが……まさかオレがこの小屋の中にいる間に置いたのか? 

 ヤツの手玉にとられっぱなしかと思うとさらに怒りがこみあげてくる。


 感情をぐっとこらえながら淡々と小屋の中から武器を搬出した。「対戦車無反動砲」「携行型地対空ミサイル」「重機関銃」をチョイスしたものの、チームでなく単独、標的が何なのかわからない。作戦内容も不明。これでは選べと言っても困る。そういうこともあり「スタングレネード」や「スモークグレネード」等複数の手りゅう弾も持つことにした。

 トラックの荷台にそれらを搬入、固定してからその工場を後にした。


 今回アジトとして住む場所が廃屋だから良かったが、侵入検知装置もセットしなくてはならず手間が増えたし、大型武器を所持することにより様々なリスクも背負うことになる。非常に厄介だ。


 この日はそれ以降ヤツからの通信はなかった。


 翌朝、次の指示があり、夜まで待機せよということだったので、じっと待つ。


『トーリ君、私だ。深夜になったら市場へ向かえ。トラックに積んだ物を使用して片っ端から店を破壊しろ。作戦開始時間はマルヒトマルマル。三百秒以内に撤収のこと。作戦時に通信はしない。以上だ』


 ついに攻撃命令が来た。

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