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第十二話 決戦

第十二話 決戦



 電話が鳴った。相手はケハラ。


「もしもし?」

『ケハラだ。お前に頼まれていたアミーという悪魔について調べた。コイツは攻撃的ではないが、今回のように様々な画策や陰謀、裏切りといったことを得意としていて、攻撃性と言う点ではそれほど多彩な術は使わない。ただ火を操るようだからそれだけは要注意だ。あとは変装をして相手をたぶらかしたりするらしい』

「なるほど、わかった。ありがとう」

『トリー、サトーは午後からスケジュールが空白だ。恐らくお前のテロ行為を指示するために空けたんだろうが、状況が変わった今、立て直しのために一人になろうとするはずだ。そちらに行く可能性は高い』

「ああ。わかった」

『気を付けてな』


 電話を切ってから、オレは索敵状態を維持するよう努めた。非常に疲労するが間違いのないやり方と判断してのことだ。


 二時間後、オレの生体探知が機能した。しかし……これは……

 ステルス装置の一種なのか、個体識別ができない。軍で配布されているものなのだろうか。


 相手がわからなくても無視するわけにはいかない。オレはすぐに森の入り口付近に潜んだ。正体不明の人物はオレがかつて潜入したルートからやってくるようだった。


 来た。


 ソイツは迷彩服姿だ。目出し帽で目立たないようにしている。


 オレはスニーキング歩行で近づき、ヤツの背後から一気に間を詰めた。


「現場から離れ過ぎて兵士の勘がすっかり鈍ったようだな、サトー」


 サトー以外で妖精の森に入ってくるヤツはいないだろう。仮に作戦だったとしたら別だが、オレはサトーだと確信をもってそう言い放ち、ヤツの腕を取りソイツの首にナイフの刃を当てながらある種の死刑宣告をした。だが――


「ま、待て! オレだ、オレ!」


 ソイツは慌てて大声を上げ、抵抗する意思はないとアピールした。


「ケハラじゃないか!? 何をやっているんだ!?」


 オレはナイフを下ろし、彼の拘束を解いた。

「ああ、すまん。お前にサトー対策の有力情報を伝えようと慌ててきたんだ。作戦行動中は無線も電話も出来んしな」

「そうか。しかし……らしくないぞ。無防備な姿で来ちまって……襲ってくれと言っているようなもんだぞ?」

「トーリが心配で無我夢中できちまったからな、すまん」

「……そうか」

「渡したいと思っていたのはこれなんだが……」

「……」


 ケハラは制服のポケットをまさぐり始め――

 突然逆手持ちしたナイフをオレの首めがけて振ってきた。

 だがオレは悠然とよけ、バックステップで距離を取った。


「な、なぜ避けることが出来た?」

 ソイツはかなり動揺している。


「……探知で人物特定できなかったことがまず一つ。それとオレのことを『トーリ』と呼んだことだ。本物のケハラはそう呼ばない。そして……ケハラはオレの大事な娘たちを置いてこんなところに出てこない!」

「……ちっ」

「観念しろ、サトー!」


 オレは再び間合いを詰めて、ヤツに飛び掛かった――


「ぬあっ!!」


 顔面に耐え難い高熱を感じた。さらに視界がゼロになってしまった。どうやら何かしらの炎術を食らったようだ。

 オレはやみくもに飛び回って草むらの音が足元からした瞬間に身を屈めた。本能的に身を隠す行動を優先したのだ。

 だが、形勢は一転して不利になった。


 目が見えない状態でどうやって戦う?


 サトーはオレの位置を確認できているのだろうか? いや、そもそもオレはちゃんと隠れているのだろうか? 

 焦った時の習慣でタクティカルベストのポケットやポーチをまさぐっていた時に良い物を見つけた。


 サトーの足音が近づいてきた。やはりヤツはオレがいる場所を把握している。


「トーリ君、君のおかげで私の計画はパーだよ。この地位に上るまでに何年もかかっている。そしてようやく妖精とグリース王国で互いに消耗戦が始まり、そして次は隣国ルリカ連邦と戦争してもらう計画だった。君の装備がルリカ製ばかりだったのもそういう理由だ。こうなってしまったからにはグリース王国から仕掛けるのはあきらめるしかないがね。今度はルリカに渡って向こうで新たな戦の種を作るとしよう。……だが! 君に何の礼もしないでここを去るというのは私の哲学に反するし、万一また邪魔でもされたらたまったもんじゃないからね。当初の計画に戻って妖精に殺られて殉職というシナリオはどうだね?」


 サトーは勝利の確信があるのかペラペラと喋りながら近寄ってくる。おかげで距離感も方向もバッチリだ。


 オレはヤツが十五メートルほどの距離になった時に閃光発音型手りゅう弾を投てきした。そしてすぐに耳を押さえ身を屈めた。

 ドンッと地響きのような音と共に恐らく強烈な発光。防御しても十二分に感じる。ヤツが用意してくれたスタングレネードがこんなところで役に立つとは実に皮肉だ。


「ぎいあああああ!!」


 サトーの悲鳴とヤツがバタバタと転がり回っている地面の音が聞こえる。ヤツの目と耳は一時使用不可能になったはずだ。ただ、これでようやくイーブンになっただけ。攻勢に転じるにはさらに一考を要する。


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