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GENOM-劣性遺伝子-  作者: ももす
3/3

マジックアワー


夕方の中央(セントラル)には沢山の人が集まる。

地上も地下も関係なく、忙しない賑やかな時が過ぎる。


放課後、仕事終わり、夕飯前、、

皆が皆自分の用で一杯だと言うのに

彼方此方からの視線を感じるのは自意識過剰では無い。


美少女、それも世界的に有名な女の子を連れ歩いているのだ。

同世代の女性らがヒソヒソと黄色い声をあげる。

男らも同様だ、見惚れているのが分かる。

お年寄りは有難がって深くお辞儀をする始末だ。


相変わらず彼女の隣は慣れない。


「あったー!ここ、ここ!」


なるほど、昔で言うインド風の本格カレーか。

かつて地球には国境と言うものがあり

それに分けられた領土がひとつひとつの国として

国家を築いていたらしい、インドはその国のひとつだ。


店に入ると、絹の評判とは裏腹に客は僕達2人。

オススメを2つ注文する。


「ねえ、宗はさ、この世界どう思う?」

「えっ、何、急に。どうした?」


唐突な質問に驚く、と言うより

同じ事を考えていたのが単純に嬉しかった。


「んー、、なんだかさ。

私、今生きてるこの時代ってちょっと怖いんだよね。

昔の事を知れば知る程ね。

宗や彩士のご先祖様には申し訳ないんだけど、、

ゲノムって、本当に便利なだけのスーパー発明なのかな、、って、、」


「わからない、、僕も何も分からないから、

櫛木博士の残した手記を解読したいんだ。

解読出来たら、絹と彩士に一番に話すよ。」


その後も他愛の無い話に、冗談も飛ばし合い

笑い声は絶えなかったが、その時

根拠の無い不安が襲っていたのは絹も同じだろう。

それなり のカレーを食べ終わり店を出ると

19時になるのを報せるチャイムが街中に響いた。


「こんなの、無ければいいんだ」


絹はいつもそう言う。


「今日は、誘ってくれてありがとう。

今度は彩士も連れて来よう。」


それには答えず、僕は今日の別れを切り出す。


「あ、うん。此方こそ付き合ってくれてありがとうね。また明日ね!徹夜し過ぎはだめだよー!」

「うん、また明日ね。気を付けて。」


僕らは手を振って互いの場所に帰る。

互いの住むべき街へ。



絹は、ゲノム達の暮らす

この華やかで、綺麗で、清潔で、賑やかで、豊かな

地上の、更に聖域とも呼ばれる御所へ。


僕は、ナチュラル達の暮らす

あの鬱蒼で、地味で、不潔で、静かで、貧困の蔓延る

地下へ。


さあ、20時になる前に帰らなければ。

急ごう。

僕は、駆け足で、群青の空と夕焼けの橙色が混ざる

この景色を惜しみつつ、帰路につく。



原則、ナチュラルは20時以降地上に出てはならない。

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