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櫛木宗一郎
2025年一番のニュースと言えば世界中の誰もが
同じ事件を想像するに違いない
その年のノーベル賞は特に科学の分野が注目を集めた。
ヒトの遺伝子を改変し、より優秀な遺伝子に組み替える
懸念されていた人体へのリスクも無し
遺伝的な病気や生活疾患からの解放
〝ゲノム編集〟
世界はそう呼んだ。
そして会見は約18秒、前代未聞の短さだ。
「この発見こそ、世界を破滅へと導くだろう」
櫛木宗一郎はそれだけを言い残し席を立ってしまった。
そして次の日
受賞者や関係者、王室に政治家、錚々たる面々が
参加するパーティにその男は現れず
心配した秘書がホテルに呼びに行く事となったが
ベッドに横たわり変わり果てた櫛木の姿があるだけだった。
変死、世間ではその日以降
自殺や他殺あらゆる調査と憶測が為されたが
それ以上の情報がおおやけになる事は無く
人々の記憶から事件が薄れていくのにそれ程時間は掛からなかった。
―それから500年後の世界―
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