第八話 消火活動してみましょう
無事買いものを終えて、トカチにお礼を伝えたあと、屋敷に戻ってみんなでごはんを食べた。
モーダさんもティティさんも、「こ、これはケーキ屋木漏れ日のケーキでは!?」と大変喜んでくれた。
正確に言うとそれを買ったのは喫茶店なのだけど、トカチのお店が木漏れ日とかいっていたので、間違いではないだろう。
トカチケーキ、意外に有名だった。
まあ、美味しかったもんなぁ。
さて、と庭の芝生に寝転がりながら手紙をしたためる。
みんな無事であること。
魔王様いい人(いい魔族?)なのでスローライフ送らせてもらえることになったこと。
人間自体への恐怖や敵意はあるようだけど、基本的にみんな良くしてくれること。
だから、心配しないでほしい旨を丁寧に書く。
2人の身体を労る文章で締めて、これでOK。
出すのは明日でもいいかな。
そんなふうに伸びをして、コロさんにダイブした時だった。
『主さま、街から火があがっています』
そう、ドンさんが困ったように声をあげた。
「あ、トカチ」
「おお、タテヤマか!」
こういう困った場面にはついつい首を突っ込みたくなるのは性分か。
思わずコロさんに頼んで火事現場まで走ってくる。
そこにはたくさん人があつまっていて、しかし井戸が近くにないことと、水魔法を使えるひとがいないという状況らしく、火はどんどん燃え上がっている。
「中に人は?」
「いねぇみたいだ。だけど、このままじゃまわりに燃え広がっちまうし、そうなれば魔族的被害も出るかもしれねぇ」
「そう。うん。おっけー」
「は?」
僕は、ドンさんに声をかける。
「ドンさん、乗せて!」
『心得ました』
そういうとドンさんは僕の肩から翼を広げて浮き上がり、もとの大きさへと一気に戻って上空へと舞い上がる。
「中に人がいないなら、上からザバーっで水をかけても大丈夫だよね!」
よっと声をかけて、僕は大きくジャンプし、ドンさんの背中へと飛び乗った。
これもまた、一つの魔法だ。
「あ、トカチー!」
「お、おう!?」
「今から火に向かって水ぶっかけるから、人をさがらせてもらっていいかなぁー!コロさんも手伝ってあげて!」
『まかせて、あるじ!』
「お、おう!?」
コロさんは、トンっと軽い調子で人だかりのまえに飛び出る。
慌てて、トカチもおなじように飛び出した。
集まっている人たちは、僕をぽかんと見上げているひとと、心配そうに火の方をみているひととそれぞれだったけど、コロさんがウォーン、と遠吠えをしてくれて、ほとんどの人が2人の方へ視線を移した。
「えっと!?なんか良くわかんねぇが、今上にいるのが、英雄タテヤマだ!」
そこから?
トカチの声を聞きながら、僕は水の魔法を練っていく。
「で、いまからタテヤマが火事を鎮火してくれる!危ないからこの家から離れてくれ!」
タテヤマの名前をだしたことで、みんなは騒ついていたけれど、ゆっくりと家から離れてくれる。トカチのいうことなら…みたいな声も聞こえたから、この街でトカチはかなりしたわれているのかもしれない。
「こんなもんでいいかー!?」
下からトカチが叫んだので、僕は手を振った。
「おっけー、おっけー!ありがとー!」
僕の方の準備もできた。
大量の水を家の上に浮かす。
この水の塊をそのまま落とすと、大惨事になること間違いなしなので、柔らかいシャワーのように変化させて、ざあ、と降らせた。
ドンさんが、水が家以外を濡らさないように風でフォローしてくれているのがわかる。
(さすがドンさん。ナイスフォロー!)
『うふふ、そうでしょう?』
小首をかしげるドンさん。超美人、やばいわー。
煙と火はだんだんと小さくなり、やがて、ぷすぷすと小さく燻るくらいになる。
下に降りてのこりの燻りを踏んで、消した。
「はい、これでなんとかなった!良かったよかった」
我ながらいいことしたなー、とうんうん頷いていると、トカチがおまえ…と呆れながらやってきた。
「噂で知ってたけど、本当になんでもありなんだな」
「うん?」
「あんな水魔法みたことねぇぞ」
「そう?」
確かに、正規の魔法ではないから、みたことないといわれても仕方ないのだけど。
「ま、何にせよ火事がそうそうに収まってよかったぜ!ありがとな、タテヤマ!」
「いったぁ!もう、トカチ、力加減考えて…、まあいいや。お役に立てたならなにより」
バンバンと背中を叩かれながら笑っていると、可愛らしい女の子が2人、「あのう」と声をかけてきた。
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4/17 タイトル誤字を修正しました 消化→消火