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第五話 城下町での出会い

 モーダさんたちに一声かけて、僕たちは城下町へと繰り出した。

 大きな通りに差し掛かると、日本の都市部を思い出す程度の人がいた。みんな大きな声で笑い合ったり、客寄せしたり、なんだか美味しそうな匂いが漂っていたりする。

 戦い中にしか来たことがなかったから、こんなに活気のある場所だったのかとすこし驚いた。当たり前か。彼らにとっては敵である人間が城下まで来て、死ぬかもしれないという状況だったのだから。

「さて。とりあえず、ウィンドウショッピングと洒落込もうか」

 モーダさんたちからお小遣いを貰ってしまったので今回はありがたく使わせてもらうとして、でも。(うーん、これ税金なのでは)と思うとちょっと使いづらい。

 日本人だからかしらん。

 人の国で勇者業してたときは、一応「働いている」意識があったからお給金的な意味でお金を支給されることに抵抗はなかったのだけど。

 やっぱり、自分で稼げる手段を何か考えたいところだなぁ。

 そういえば、最初のうちものすごい違和感が凄かったんだけど、ここの貨幣単価は「円」だ。こんなに『ざ・ふぁんたじー』な世界なのに。魔法とかモンスターとかいるのに。

 それも、僕が暮らしていた日本と変わらない物価イメージ。

 いや、ちょっと安いかなあ?

 魔の国の通貨も同じ。

 給与大体平均月20万前後で、家賃はちょっと安め。

 この世界は生活魔法があるのでガス電気みたいなものはない。

 そんなことを考えながら、文具屋さんを目指して歩いていると、

「おいおいおいっ、おまえ人間じゃねぇか!?」

 突然後ろから声をかけられた。

 びっくりして振り返ると、僕から1メートルくらい離れたところに、ムキムキの赤い肌で角のあるお兄ちゃんが僕を睨みつけていた。

「えー、と。僕のことですか?」

「テメェ以外に何があるってんだ!」

 ピリピリとした怒気を感じて、ふっと思った。

 魔王様は僕のことを嫌っている国民はそんなにいないって言ってたけど、僕、勇者業していたとき一応頭からつま先まで鎧着けてたし、僕の顔ってあんまり知られていないのでは…?

「ここは魔の国だ!そうそう人間が遊びに来ていい場所じゃねぇんだよ!」

「うんまあ、城下町には遊びに来てるんだけど、魔の国にきたのは人じt」

「黙れ!」

「うーん…」

 僕が飄々としていることが気に食わないのか、よほど腕に自信があるのか、赤肌兄ちゃんは有無を言わさずに僕に殴りかかってきた。

『あるじ、やる?』

『私でもかまいませんのよ』

(いいよ、大丈夫)

 突然殴りかかられたことに対して従魔2人がいらっとしたのがわかったけど、さすがに彼らに任せるのは申し訳ない。

 念話で終わらせて、僕は赤肌兄ちゃんを見る。

 遅い。

 こちらに伸ばしてきた腕を掴んで、反対側になげてそのまま地面に寝転ばす。

 風魔法でエアクッションを挟むのを忘れずに。

「え…?」

 痛みもないだろうし、なんで自分が空を見ているのかわかってない、そんな顔をしている赤肌兄ちゃんが僕を見た。

「気持ちはわかるけど、不可侵条約結んだばかり、停戦したばかりで、人の国の人間に手を出すのは、あまり良くないと思いますよ?人の国の王様は、魔王様みたいに良い人じゃないし」

 目をパチクリしながら赤肌兄ちゃんは僕を見る。

 にこっと笑ってみせるが、後ろの2匹が全力で彼に向かって威圧してるのを感じた。

 だめだよ、コロさん、ドンさん。君達のそれは、やばいって。

 赤肌兄ちゃんは寝転がったままカタカタと震えるが、失神はしない。

 おお、なかなかの剛のものだ。

「〜〜ッ」

 歯の根の合わない赤肌兄ちゃんは、それでもなんとか僕を睨む。

 なんだか楽しくなってきた。

「お兄さん、僕の名前は館山貞義。貴方は?」

「た、たた、タテヤマ!?」

 赤肌兄ちゃんは名前を聞いた途端に飛び起きて、「すんません!英雄様とは露知らず!!」と90度の礼をした。

 うーん。ちょっと興醒め?

「ええと、とりあえず顔をあげてもらってもいいですか?」

「は、はいっ」

「あと、敬語もやめてもらっていいですか?」

「え!?ええと、お、おう?」

 お、やっぱり、いい感じ?

 やっちまった!というのは顔にでているけど、そこには恐怖や羨望はない。

「まず、僕が館山だとすぐに信じてくれてありがとうございます。お兄さん、お名前は?」

「俺はトカチでs…、…だ。悪かった。友人が軍の所属でな。戦争で怪我して帰ってきたんで、どうしても腹が立っちまって」

「……」

 殺さず、は全員を無傷で守りきったというわけではない。

 浅くない怪我をした人間や魔族も、多くいた。

 ちくり、と胸が痛くなる。

 そんな僕の顔を読んだのか、トカチさんは慌てたように言った。

「で、でもな!英雄様のことは皆恨んじゃいねぇよ!あんたが1人…いや、後ろのお供もいれりゃ3人?か?で進むようになってから、怪我人すら殆どいなくなった。そして、最後まであんたは誰も殺しちゃいない。…本当に、その点は感謝してるんだぜ」

「ありがとう、ございます」

 笑ってみせると、トカチさんはホッとしたように、笑顔を返してくれた。

「でも、なんでまた英雄様がこんなところにいるんだ?人の国に帰ったんじゃなかったのか?」

「うーん、いろいろありまして。こっちに住むことになったんです」

「へぇ?」

「あと、英雄様ってやめてもらっていいですか?なんだか、くすぐったいです」

 苦笑い。

 とかちさんは一瞬キョトン、として、そのあとあっはっは!と笑った。

「いいぜ、じゃあタテヤマな!タテヤマも俺にさん付けたり、ましてや敬語なんてやめとけやめとけ!周りの奴らに俺が叱られちまうわ!」

「そう?じゃあ了解。よろしくねトカチ」

「おう!」

 魔の国に引っ越してきて、最初の友達が出来たかもしれない。

 そう思うと、なんだかとっても嬉しくなった。

読んでくださってありがとうございます!

不定更新のまったりペースですが、よろしければお付き合いくださいませ!


4/14 サブタイトルつけました

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